ID番号 | : | 09077 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | キングスオート事件 |
争点 | : | 管理職候補として採用された労働者の試用期間中の解雇の有効性が問われた事案(労働者一部勝訴) |
事案概要 | : | (1) 被告Yの従業員であった原告Xが、試用期間満了日である平成26年3月31日付けで留保解約権の行使により解雇されたところ、Yに対し、本件解雇の無効及び賃金の未払等を主張して、労働契約に基づき、〈1〉労働契約上の地位確認、〈2〉未払賃金の支払、〈3〉未払割増賃金の支払、及び労働基準法114条に基づき、〈4〉付加金の支払を求めるとともに、Y従業員らのパワーハラスメント等及び違法な本件解雇により精神的苦痛を被ったなどと主張して、〈5〉不法行為又は労働契約上の債務不履行(職場環境配慮義務違反)に基づき、損害賠償(慰謝料及び弁護士費用合計220万円)の支払を求め提訴したもの。 (2) 東京地裁は、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないとし解雇は有効であるとしたため、Xの地位確認請求および賃金請求を棄却し、パワハラ等についての損害賠償請求も棄却したが、未払割増賃金請求及び付加金請求については一部請求を認容した。 |
参照法条 | : | 民法715条1項 民法709条 労働基準法37条 労働基準法114条 労働契約法16条 |
体系項目 | : | 労働契約/試用期間/本採用拒否・解雇 解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用 賃金(民事)/賃金請求権の発生/無効な解雇と賃金請求権 労働契約(民事) /労働契約上の権利義務 /使用者に対する労災以外の損害賠償請求 |
裁判年月日 | : | 2015年10月9日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)第17940号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働経済判例速報2270号17頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約/試用期間/本採用拒否・解雇〕 〔解雇(民事)/解雇権の濫用/解雇権の濫用〕 〔賃金(民事)/賃金請求権の発生/無効な解雇と賃金請求権〕 Xには管理部の責任者として高い水準の能力を発揮することが求められていたところ、十分な時間をかけて指導を受けたにもかかわらず、インプット作業のような単純作業を適切に行うことができないなど、基本的な業務遂行能力が乏しく、管理職としての適格性に疑問を抱かせる態度もあったこと、Xのインプット作業によりFらの業務が停滞して苦情が出され、インターネット閲覧についても女性従業員から苦情が出されるなど、Yの業務に支障が生じていたこと、前任者としてXに引き継ぎ、指導を行うべきDが平成26年2月末には出向解除によりプロト社に戻る予定であり、上記のような状態でXが管理部のシニアマネージャーになれば、Xが適切に管理部の統括業務を遂行することができず、管理部の業務により大きな支障が生じるおそれがあると判断されてもやむを得ない状態であったことが認められる。これに加えて、Yの規模やXの採用条件によれば配置転換等の措置をとるのは困難であったと認められること、Xは当時試用期間中であり、インプット作業の問題について繰り返し指導を受けるなど、改善の必要性について十分認識し得たのであるから、改めて解雇の可能性を告げて警告することが必要であったとはいえないこと等の事情も考慮すると、本件解雇が試用期間の経過を待たずに決定されたものであること、Xが同年2月22日に抑うつ状態と診断されていること等、Xが主張する事情を考慮しても、本件解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるものとは認められない。(中略) 本件解雇が有効であることは上記2のとおりであるから、本件解雇後である平成26年4月分以降の賃金支払請求は理由がなく、下記(1)、(2)のとおり、その余の未払賃金請求も理由がない。 〔労働契約(民事) /労働契約上の権利義務 /使用者に対する労災以外の損害賠償請求〕 DやFが違法なパワーハラスメントをしていたと認められないことは上記アないしエのとおりであるし、Aは、休日である同月11日にXと会って相談に乗るなどしており、Xの相談を無視していたような事実は認められないことから、Yに職場環境配慮義務違反があったとは認められない。 (2) 不法行為(違法解雇)による損害賠償請求について 上記2のとおり、本件解雇は有効であり、違法なものとは認められないから、本件解雇の違法を原因とする損害賠償請求は理由がない。 〔賃金(民事)/割増賃金/支払い義務〕 〔雑則(民事)/付加金/付加金〕 上記期間のXの割増賃金は、別紙2-1及び2記載のとおり合計13万5681円と認められるから、Xの未払割増賃金請求はこの限度で理由がある。 6 争点(5)(付加金請求)について 上記5のとおり、Yは、労働基準法に違反してXに対する割増賃金の支払を一切しておらず、Yのために特に斟酌すべき事情も認められないことから、労働基準法114条に基づき、付加金として上記未払割増賃金と同額の13万5681円の支払を命じるのが相当であり、Xの付加金請求はこの限度で理由がある。 |