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ID番号 09080
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 四国化工機ほか1社事件
争点 自殺した社員に対する会社の安全配慮義務違反が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 被控訴人Y1(被告、四国化工機)に勤務し、Y1の子会社である控訴人Y2(被告、植田酪農機工業)に出向し、その後Y1に戻ったCが平成11年11月24日頃に自殺したのは、Y1らの安全配慮義務違反によるものであるとして、Cの妻であった控訴人兼被控訴人X1(原告)が、Y1らに対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、5064万6730円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求め、Cの子であった控訴人兼被控訴人X2(原告)及びX3(原告)が、Y1らに対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、各2532万3365円及びこれらに対する遅延損害金の連帯支払を求め提訴したもの。
(2) 徳島地裁は、Y2の安全配慮義務違反及び同義務違反とCの自殺との相当因果関係のいずれをも認めた上で、X1のY2に対する請求を1475万5193円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で、X2及びX3のY2に対する請求を各2490万0350円及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で、それぞれ認容し、その余を棄却し、Y1の安全配慮義務違反は認められないとして、X1らのY1に対する請求をいずれも棄却したため、Y2が敗訴部分の取消しを求めて、X1らはY1に対する請求について控訴したところ、高松高裁はY2の控訴を認容し、Xの控訴を棄却した。
参照法条 労働契約法5条
民法709条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2015年10月30日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ネ)第304号
裁判結果 原判決一部取消
出典 労働判例1133号47頁
審級関係 一審  平成25年7月18日/徳島地方裁判所/民事部/判決/平成22年(ワ)235号
上告、上告受理申立
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
(1) Y1の出向命令に係る安全配慮義務違反の有無等について
 X1らは、Y1がCをY2に出向させたことそれ自体が安全配慮義務違反に当たる旨主張する。しかしながら、前記認定事実のとおり、Cは、平成11年3月当時、Y1に入社して12年の中堅技術者であり、3度の社内表彰も受けるなどの業績を上げていることに鑑みると、未経験の機種であってもこれを担当し、その改造設計等を担当する力量を有していたと認められる。そうすると、Cが、Y2で担当する機種(UFS-10、UFS-12等)を担当したことがなかったとしても、Y1がCを出向候補者に選定したことが不合理であると認めるのは困難である。(中略)
 これらの事情からすると、X1らが主張するような検討調整義務をY1が負担していたとはいえない。
(2) 争点(2)(Y2の安全配慮義務違反の有無)等について(中略)
 G常務がCに対する平成11年5月8日の業務指示の際に、Cがうつ病等の精神疾患に罹患することを予見することができたとはいえないから、Cがうつ病を発症したことについてY2に安全配慮義務違反があったとは認められない。また、X1らは、Cのうつ病発症の防止のためY1もY2と同一の安全配慮義務を負担していた旨主張するが、Y1に対するX1らの主張を容れることもできない。 (3) C復職後のY1の責任について(争点(1))
 Y1の上司(T本部長やR部長)がCの主治医であるM医師と面談し、Cの復職の可否や復職後の対応方法について相談し、復職後はCに対して軽易な業務を与えるにとどめるなど配慮をしてきたことをも踏まえれば、Cの復職後のY1の対応が平成11年当時の知見に照らして、不適切であったとはいえず、Y1に安全配慮義務違反があったとは認められない。