全 情 報

ID番号 09081
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 NHK(フランス語担当者)事件
争点 NHKラジオアナウンス業務担当者の労働者性と契約解除の有効性が問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 被告Y(NHK)によるフランス語のラジオ放送においてアナウンス業務等を担当していた原告Xが、主位的に、Yとの間で労働契約を締結していたところ、東日本大震災に際して業務を行わなかったことを理由に不当に解雇されたと主張して、労働契約上の地位確認を求め(請求1)、上記労働契約及び不法行為責任に基づき、賃金及び損害賠償金の支払を求め(請求2、3)、予備的に、Yとの間の契約が業務委託契約であったとしても、その解除及び更新拒絶は無効であるとして、上記業務委託契約及び不法行為責任に基づき、業務委託料及び損害賠償金の支払を求め提訴したもの。
(2) 東京地裁は、XY間の契約は労働契約に該当しないとし、他方で、本件業務委託契約の解除及び更新拒絶は無効であるとし、Xの請求を一部認容した。
参照法条 労働基準法9条
労働契約法2条
民法709条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/委任・請負と労働契約
裁判年月日 2015年11月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)第640号
裁判結果 一部認容、一部却下、一部棄却(確定)
出典 労働判例1134号57頁
労働経済判例速報2274号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)‐労働者‐委任・請負と労働契約〕
 Xがその業務遂行の方法等についてYの指示・指導等を受けていたとは認められず、Xは、依頼された業務を第三者に再依頼することも許されており、また、就業する際の時間的・場所的拘束の程度も緩やかであったことからすれば、XがYの指揮監督下で労務を提供していたとはいえない。報酬の支払方法や公租公課の負担等をみても、Xが労働基準法、労働契約法上の労働者であることの根拠となる事情は見当たらず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件契約は労働契約とは認められず、前記業務の内容や業務遂行方法等におけるXの独立性の強さに照らすと、本件契約は、準委任契約としての性格を有する業務委託契約と解するのが相当である。
 よって、Xの請求のうち、本件契約が労働契約であることを前提とする請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がない。(中略)
 平成23年3月15日は、同月11日に福島第一原発事故が起き、いまだ事態は収束の様相を見せておらず、東日本在住の多くの者が不安を感じながら日々の暮らしを送っていたことは公知の事実に属するともいえ、前記2(2)ウの駐日フランス大使館のように、日本に在留する自国民に対し国外等への避難を勧める国も少なくなく、実際に多数の在日外国人が国外へ避難していたことは証拠(甲14から22まで)のとおりであって、そのような折に、Xが、Yから受託していた業務より生命・身体の安全等を優先して国外へ避難したとしても、そのこと自体は強く責められるものではない。前記2(2)カ、ケのとおり、Xの他に少なくともフランス語担当者6名が国外等に避難し、その間Yの業務に就かなかったところ、これらの6名のうち、Yが契約を解除し、又は次年度の契約を締結しなかった者はいないのであって、Xが福島第一原発事故による影響等を考慮して同月15日に避難したことを捉えて、「本業務の実施内容が不十分又は不完全であり、改善の見込みがない」(本件契約書16条3項1号)又は「その他本件契約を継続し難い事由が生じた」(同条項5号)に当たるものと解するのは均衡を欠き相当でない。