ID番号 | : | 09090 |
事件名 | : | 配転命令無効確認等請求事件、配転無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ナカヤマ事件 |
争点 | : | ノルマ未達成を理由とする配転命令の有効性が問われた事案(労働者一部勝訴) |
事案概要 | : | (1) Y(被告)の従業員であるX(原告)が、福井支店から長野支店への配転命令を受け、その有効性を争ったことを契機として出勤していないところ、Yに対し、未払賃金、未払時間外労働賃金、労働基準法114条所定の付加金及びこれらに対する遅延損害金の各支払を求める事案である。 (2) 福井地裁は、配転命令権の濫用があったと認め、Ⅹの請求を一部認めた。 |
参照法条 | : | 民法536条 労働契約法 労働基準法37条 労働基準法114条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2016年1月15日 |
裁判所名 | : | 福井地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)第150号/平成26年(ワ)第152号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1132号5頁 判例時報2306号127頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕 〈1〉本件賞罰規定は、Xら「M社員」に対し、地域的特性も考慮することなく、困難な売上高の達成を求めるものである一方で、それが一か月でも達成できなかった場合には、直ちに、固定給を月額10万円減額するか、Yの決定する他の支店に異動させるという制裁を課すものであること、〈2〉前記のとおり、本件賞罰規定上の制裁措置として、実質的な降格と配転命令があったが、Yは、Xが制裁対象となった後、繰り返し申請に基づく降格か自主退職かを選ぶよう求めるだけで、配転命令については言及していなかったこと、〈3〉Y側から連日のように働き掛けたのに、Xが降格に応じようとしなかったため、異動先の内示も全くないまま、突如、本件配転命令を発令したこと、〈4〉Aは、Xに対し、本件配転命令発令後、直ちに異動先の長野支店に向かうよう指示し、これに応じないのであれば自主退職をするしかないと述べたことが認められる。 本件賞罰規定による制裁は、その発令要件との関係で過酷にすぎ、著しく不合理であるといわざるを得ない。また、本件賞罰規定は、制裁措置として「S社員」等への実質的な降格の他に配転命令を挙げてはいるが、Yは、制裁対象となったXに対し、自主的な降格又は退職のみを勧め、Xがこれらのいずれにも応じずにいたところ、突如として本件賞罰規定に基づいて本件配転命令を発令し、これに応じないXに対して、やはり自主退職を促したというのであって、本件配転命令の根拠となった本件賞罰規定の目的は、専ら固定給の高い「M社員」を減らすという点にのみあったと認められる。 Xは、本件配転命令発令まで、50年近く福井市内で暮らし、発令当時は妻子と同居していたと認められるところ、内示もないまま突如として長野支店への異動を命じられることは、X及びその家族にとって生活上著しい不利益となることは明らかである。 |