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ID番号 09092
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 一般財団法人厚生年金事業振興団事件
争点 病院による院長に対する解雇の有効性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 公益法人Y(被告、被控訴人)との間で、A厚生年金病院(平成26年4月1日以降の名称はA病院、以下「本件病院」という。)の院長等として勤務することなどを内容とする雇用契約を締結したX(原告、控訴人)が、Yに対し、解雇無効を主張して、雇用契約に基づく賃金請求または同契約の債務不履行に基づく損害賠償請求として、4000万円の支払を求める事案である。
(2) 東京地裁は、本件解雇はYの解散に伴う事業上の都合によるやむを得ない理由に基づくものとして有効であるとしたため、Xが控訴及び損害賠償請求として、2000万円の支払請求を予備的に追加したところ、東京高裁も原審を維持し、控訴および予備的追加請求を棄却した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 解雇(民事)/解雇事由/企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
裁判年月日 2016年2月17日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ネ)第5407号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1139号37頁
審級関係 一審 東京地方裁判所/平成27年9月18日/平成26年(ワ)第13271号
確定
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/解雇事由/企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
 Yは同年6月30日に目的である事業の不能により解散して清算手続中であることが認められ、これによれば同年2月26日に行われた本件解雇は、Yの就業規則26条5号の「事業上の都合によりやむを得ないとき」に該当するものであって、有効なものであると認められる。
 本件解雇は、経営上必要とされる人員削減を行うための解雇ではなく、Yにおける事業の廃止にともなう解雇であり、整理解雇の四要件がみたされなければ無効であるとはいえない。
 Yは、Xを含む職員に対して、法改正に伴う対応について十分な説明をしているものと認められ、本件解雇に至る手続に本件解雇を無効にするような瑕疵があるとは認められない。
 新機構における職員の採用については、Yが職員との間で締結していた雇用契約が新機構に当然に承継されるものではなく、新機構がその裁量において選考し、決定したものであり、仮に本件病院の職員について控訴人を除く全ての希望者が新機構に雇用されたものであるとしても、それは新機構(改組前のRFO)の選考による結果である。
 病院長であるXは、本件病院の他の職員とは異なる立場にあり、新機構(改組前のRFO)がXを病院長として雇用しないこととしたことについては、Xが新機構における定年年齢を超えていたことや本件病院の診療科目との関係で整形外科を専門とする医師を病院長とすることが望まれたことなどの理由が控訴人に対して示されており、さらに医師としても雇用をしない判断をしたのは、Xの新機構(改組前のRFO)との交渉過程におけるXの言動を理由とするものであることからすると、Xについてのみ差別的取扱いが行われたとみることもできない。