ID番号 | : | 09095 |
事件名 | : | 未払賃金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三幸学園事件 |
争点 | : | 元教員による時間外労働についての割増賃金請求等が争われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) 学校法人Y(被告)との間で労働契約を締結して、Yが運営する専門学校で教職員として勤務したXが、退職後にYに対し、在職中に時間外労働をしたと主張して、賃金請求権に基づく割増賃金及び遅延損害金の支払を求めるとともに、上記割増賃金の不払について労働基準法114条に基づく付加金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 東京地裁は、Xの主張する時間外労働の存在を認め、Xの請求を一部認容した。 |
参照法条 | : | 労働基準法38条 労働基準法114条 |
体系項目 | : | 労働時間(民事)/労働時間の概念/(11) 教職員の勤務時間 賃金(民事)/割増賃金/(6) 固定残業給 雑則(民事)/附加金 |
裁判年月日 | : | 2016年2月26日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)第25255号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間(民事)/労働時間の概念/(11) 教職員の勤務時間〕 労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間と解されるところ、前記認定の本件学校のカリキュラムや行事の実施状況(前記認定事実ア)、運営メンバーの業務内容(同イ)、Xが担当した授業や校務の内容(同エ、オ)に照らすと、平日の勤務日の所定終業時刻である午後5時45分以降の時間に残業を行う必要があったとするXの供述及びXの陳述書(甲34)の供述部分は、信用することができる。そして、H副校長らXの上司らにおいて、勤怠管理表からXの滞留時間を認識していたにもかかわらず、残業を行わないように注意や指導等を行っていないことを勘案すると、Xの滞留時間において、YからXに対する黙示の残業指示があったと認めるのが相当であり、Xの滞留時間は、XはYの指揮監督の下にある時間と評価できるから、労働時間に当たると認めるのが相当である。 〔賃金(民事)/割増賃金/(6) 固定残業給〕 Yの教職員給与規程(乙2)は、Yの教職員の時間外勤務(深夜勤務・休日勤務を含む。)に対する固定残業代として業務手当を支給する旨を定めている(8条)ことが認められ、就業規則等において当該手当が割増賃金の支払に代えて支払うものであることが明示されているといえるが、Yの主張によると、業務手当が教職員に一律に支給されるとのことであり、このこと自体、業務手当が教職員の時間外労働に対する対価ではなく、業務自体に対する功労等の趣旨で支給されるものであると推認でき、証拠(乙7、証人H・40頁、41頁)によるも、業務手当に対応する時間外労働時間が明らかではなく、教職員が当該業務手当に対応する時間外労働時間を超過する時間外労働を行った場合に別途支払われるべき割増賃金を計算することができない。これらの点に照らすと、業務手当は、当該手当の性格及び運用等に照らして、実質的に時間外労働等の対価と認めることはできない。 〔雑則(民事)/附加金〕 Yの割増賃金の不払は違法であるが、弁論の全趣旨によると、Yは、本件訴え提起後の和解において、Xが請求する割増賃金額をほぼ全額支払う旨の意向を有していたことが認められることに照らすと、Xが主張する諸般の事情を考慮しても、Yに対し付加金の支払を命ずることが相当であるということはできない。 |