ID番号 | : | 09104 |
事件名 | : | 退職金返還請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 野村證券元従業員事件 |
争点 | : | 同業他社への転職時の退職金返還合意の有効性が問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1) X(原告)が、元従業員のY(被告)に対し、YがXを退職する際、同業他社に転職した場合は返還する旨の合意をして退職加算金を支給したが、Xが退職後に同業他社に転職したと主張して、上記返還合意に基づき、退職加算金相当額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 東京地裁は、本件返還合意は公序良俗に反するものでなく有効であり、この合意に基づく返還請求は権利濫用に当たらないとしてXの請求を認容した。 |
参照法条 | : | |
体系項目 | : | 賃金(民事)/退職金/(4) 競業避止と退職金 |
裁判年月日 | : | 2016年3月31日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)25956号 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例1144号37頁 労働経済判例速報2283号3頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金(民事)/退職金/(4) 競業避止と退職金〕
本件制度は、退職加算金の受給に伴って本件返還合意をしなければならないことを考慮しても、Xを退職しようとする従業員にとって通常の退職よりも有利な選択肢であるということができるから、本件制度のうち本件返還合意だけを取り上げて、これが退職後の職業選択の自由を制約する競業禁止の合意であると評価することはできないというべきである。したがって、本件返還合意が競業禁止の合意であるとして、その有効性について競業禁止の目的、内容、代償措置の有無等を検討して判断すべきである旨のYの主張は、その前提において失当であり、採用することができない。 諸事情を総合勘案すると、前記(1)アに掲記した事情を十分に考慮しても、本件請求が権利の濫用であると評価することはできないというべきであり、ほかに本件請求が権利の濫用であることを基礎づけるに足りる事情は認められない。 |