全 情 報

ID番号 09105
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ジェー・ピー・モルガン・チェース・バンク・ナショナル・アソシエーション事件
争点 解雇の有効性および退職勧奨の違法性が問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (1) Y(被告)に期限の定めのなく雇用されていたX(原告)が、勤務態度、業績不良、社員としての適格性欠如、業務上のやむを得ない事情の存在などを理由として普通解雇されたが、これらに該当する事実はなく解雇は無効であるとして、Yに対し、地位確認及び解雇後の賃金の支払を求めるとともに、不当な退職強要は職場環境改善義務違反であるなどとして、不法行為に基づき慰謝料を請求する事案である。
(2) 東京地裁は、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとし解雇は無効であるとし、違法な退職勧奨の存在は否定した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 解雇(民事)/解雇権の濫用
退職/退職勧奨
裁判年月日 2016年4月11日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)23687号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/解雇権の濫用〕
 Xの行う業務のスピードや成果物の質という面で、解雇の理由とするほど劣っていたということはできず、業務指示・上長の指導等に従わなかったという事実が一部認められ、特に、秘密録音の点は被告の行為規範に違反しており、その違反態様も軽微なものとはいえないが、考慮すべき事情を踏まえると、解雇の理由になるとまではいえず、業績不良についても、Xが従前問題なく遂行できていた秘書業務等に対し、Yが新たな付加価値を求め、これに十分対応できなかったという点が主に問題にされていることからすると、この点が解雇の理由になるとまではいえない。
 したがって、本件解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、その権利を濫用した無効なものというべきである。
〔退職/退職勧奨〕
 Y側担当者の発言の中には退職(転職)や解雇に言及しており、退職の勧奨や強要と受け取ったとしても無理からぬものも含まれているが(略)業務指導の手段・方法として相当性を欠くものとはいえず、退職・解雇に執拗に言及したという事実も認められないことからすると、こうした業務指導を捉えて違法な退職強要行為があったということはできない。また、Iは、Xに対し退職を勧めているが、平成22年10月21日及び同年11月26日の2回のみで、1年間の自宅待機を経た後の話合いでのことであり、退職金の割り増しなどXに有利な退職条件を提示する一方、Xはかたくなな態度を示し、Y側の申入れを一切受け付けなかったというのであるから(乙35、39、証人K)、退職の強要に当たる行為があったとは認められない。したがって、Yにおいて違法な退職強要があったとはいえない。