ID番号 | : | 09108 |
事件名 | : | 賃金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国際自動車(第2・歩合給等)事件 |
争点 | : | 歩合給の計算にあたり残業手当相当額を控除する賃金規則の有効性が問われた事案 |
事案概要 | : | (1) タクシー会社であるY(被告)との間で労働契約を締結し、タクシー乗務員として稼働していたX(原告)らが、Yの就業規則の一部である賃金規則中の歩合給の算出方法に関する定めの一部が労働基準法37条1項の規定の趣旨を没却するものであるから無効であり、本来支払われるべき歩合給はより多額であると主張して、Yに対し、労働契約に基づいて、歩合給およびこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、同法114条に基づいて、同条所定の付加金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている事案である。 (2) 東京地裁は、Yの割増賃金算定基準は違法ではないとして、Xの請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法37条 |
体系項目 | : | 賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法 |
裁判年月日 | : | 2016年4月21日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)26409号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1141号25頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法〕 労働基準法施行規則19条1項6号によれば、賃金算定期間における歩合給(1)の総額を当該賃金算定期間における総労働時間で除した金額に時間外労働等の時間数を乗じた金額が割増賃金の算定基礎となり、これに2割5分を乗じた金額が法定の割増賃金額となる。就業規則等の定める計算方法がこれと異なっていても、算出される金額が法定の割増賃金額を下回らない限り、労働基準法37条違反ではない(昭和24年1月28日基収第3947号)。一方、Y賃金規則は、賃金算定期間における対象額Aの総額を当該賃金算定期間における総労働時間で除した金額に時間外労働等の時間数を乗じた金額が割増賃金の算定基礎となり、これに2割5分を乗じた金額を割増賃金として支払う旨を定めている。そして、本件規定によれば、対象額Aが歩合給(1)を下回ることはないし、割増賃金の計算方法が明確に示されているY賃金規則によれば、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することもできるから、Y賃金規則により、歩合給(1)に対応する法定の割増賃金以上の金額が支払われることになると認めることができる。 したがって、Y賃金規則による残業手当等は、時間外労働等が行われれば、必ず支給されることになるから、Y賃金規則は、労働基準法37条の趣旨を充足しているというべきであり、本件規定が同条の趣旨を没却し、同条による規制を潜脱するものとは認められないというべきである。 |