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ID番号 09119
事件名 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
いわゆる事件名 フジビグループ分会組合員ら(富士美術印刷)事件
争点 会社の信用を損ねる労働者の表現行為の正当性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1)X(原告、被控訴人兼附帯控訴人)が、Y(被告,控訴人兼附帯被控訴人)らの上記行為によりXの施設管理権及び名誉・信用の法的利益を侵害され、その営業妨害行為によって、取引先から取引を打ち切られるなど売上げ又は利益が減少する等の財産的損害を被り、また、名誉・信用毀損あるいは施設管理権侵害行為や業務妨害行為による無形損害を被ったと主張して、Yらに対し、共同不法行為(民法709条、719条1項)による損害賠償請求権に基づき、その一部であることを明示して2200万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
(2) 東京地裁は、Yらの行為のうち一部が信用毀損に係る共同不法行為を構成するものと認めて、Xの本件請求を350万円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却したところ、Yらが本件各控訴を提起し、Xも附帯控訴を提起したところ、東京高裁は、原審判決を維持し、双方の控訴を棄却した。
参照法条 労働組合法8条
民法709条
民法719条1項
体系項目 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務〕
裁判年月日 2016年7月4日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ネ)667号
裁判結果 控訴棄却、附帯控訴棄却
出典 労働判例1149号16頁
労働経済判例速報2290号8頁
労働法律旬報1878号39頁
審級関係 一審 東京地裁/平成28年2月10日/平成26年(ワ)第4370号
上告・上告受理申立
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(22)労働者の損害賠償義務〕
 団体行動については、同条(憲法28条)の保障の本体となる行為のうち集団的な労務の不提供を中心的内容とする争議行為と異なり、自ずから限界があるものというべきで、団体行動を受ける者の有する権利、利益を侵害することは許されないものと解するのが相当であるから、これを行う主体、目的、態様等の諸般の事情を考慮して、社会通念上相当と認められる行為に限り、その正当性を肯定すべきである。
 そして、憲法28条による団体行動権の保障を受けた労働組合法8条が、正当な争議行為によって生じた民事上の責任の免責を定めているのも、以上と同旨をいうものと解するのが相当である。
 Yらによる一連の行動は、直接には労使関係に立たない者に対して行う要請等の団体行動として社会通念上相当と認められる範囲を超えており、その違法性が阻却されることはないというべきである。