ID番号 | : | 09123 |
事件名 | : | 未払賃金等支払請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | ハマキョウレックス(差戻審)事件 |
争点 | : | 契約社員のトラック運転手と正社員との労働条件の相違の不合理性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) 一般貨物自動車運送事業等を営むY(被告)との間で、期間の定めのある労働契約を締結したXが、Yとの間で期間の定めのない労働契約を締結したYの労働者とXの労働契約における労働条件とを比較して不合理な相違のある労働条件を定めたXの労働契約部分は公序良俗等に反して無効であるとして、Yに対し、かかる権利を有する地位にあることの確認、差額賃金、並びに不法行為に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。 (2) 大津地裁差戻審は、通勤手当1万円についてのみ不合理な相違があるとしたが、それ以外のXの請求を棄却したため、XとYが双方とも控訴したところ、大阪高裁は、その他無事故手当、作業手当、給食手当について不合理な相違があるとし、それらについて不法行為の成立を認めた。 |
参照法条 | : | 民法709条 民事訴訟法259条 労働契約法20条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/均等待遇 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2016年7月26日 |
裁判所名 | : | 大阪高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ネ)3037号 |
裁判結果 | : | 原判決一部変更 |
出典 | : | 判例タイムズ1429号96頁 労働判例1143号5頁 労働経済判例速報2292号3頁 労働法律旬報1881号70頁 |
審級関係 | : | 一審 大津地裁彦根支部/平成27年5月29日/平成25年(ワ)第205号 控訴審 大阪高裁/平成27年7月31日/平成27年(ネ)第2106号 差戻第一審 大津地裁彦根支部/平成27年9月16日/平成27年(ワ)第163号 上告・上告受理申立 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇〕 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕 労働契約法20条は、「不合理と認められるもの」といえるか否かの判断については、「職務の内容」、すなわち、「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」と、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」と「その他の事情」を考慮要素とする旨規定しており、「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」とは、労働者が従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいい、「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無や範囲を指し、人材活用の仕組みと運用を意味するものと言い換えることができる。また、「その他の事情」とは、合理的な労使の慣行等の諸事情を指すものと解される。 労働契約法20条の不合理性の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるべきものであると解されるところ、同条の不合理性の主張立証責任については、「不合理と認められるもの」との文言上、規範的要件であることが明らかであるから、有期労働契約者は、相違のある個々の労働条件ごとに、当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張立証責任を負い、使用者は、当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであるとの評価を妨げる具体的事実(評価障害事実)についての主張立証責任を負うものと解するのが相当である。 Yの正社員と契約社員との間には、前記のような職務遂行能力の評価や教育訓練等を通じた人材の育成等による等級・役職への格付け等を踏まえた広域移動や人材登用の可能性といった人材活用の仕組みの有無に基づく相違が存するのであるから、前提事実(5)の労働条件の相違が同条にいう「不合理と認められるもの」に当たるか否かについて判断するに当たっては、前記のような労働契約法20条所定の考慮事情を踏まえて、個々の労働条件ごとに慎重に検討しなければならない。 本件有期労働契約に基づくXの労働条件のうち、無事故手当、作業手当、給食手当及び通勤手当の支給に関する部分は、労働契約法20条に違反して無効であるから、同条が施行された平成25年4月1日以降、前記各手当をXに支給しない扱いをしたYの対応(ただし、通勤手当については同年12月31日まで)は、民法709条の不法行為を構成すると認められ、Xは、前記各手当の不支給額と同額の損害を被ったものと認められる |