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ID番号 09127
事件名 遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・三田労基署長(シー・ヴイ・エス・ベイエリア)事件
争点 コンビニ店長の自殺につき業務起因性の有無が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) X(原告、控訴人)が処分行政庁に対し、Xの子であるAが、フランチャイズによるコンビニエンスストア事業の経営等を目的とする株式会社において過重な業務に従事したことにより精神障害を発病して自殺したと主張して、労災保険法に基づく遺族補償一時金及び葬祭料を請求したところ、処分行政庁がAには労働基準法施行規則別表第一の二第九号に定める疾病が発病していないとして、上記遺族補償一時金及び葬祭料を支給しない旨の処分をしたため、XがY(国、被告、被控訴人)に対し、本件処分の取消しを求める事案である。
(2) 東京地裁は、業務起因性を否定しXの請求を棄却したためXが控訴したところ、東京高裁は業務起因性を肯定し、Xの請求を認容した。
参照法条 労働基準法75条
労働基準法79条
労働基準法80条
労働者災害補償保険法7条
労働者災害補償保険法12条の8
労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法16条の6
労働者災害補償保険法16条の7
労働者災害補償保険法16条の8
労働者災害補償保険法17条
労働基準法施行規則35条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性
裁判年月日 2016年9月1日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(行コ)24号
裁判結果 原判決取消自判
出典 判例時報2342号75頁
判例タイムズ1433号119頁
労働判例1151号27頁
労働経済判例速報2295号9頁
審級関係 一審 東京地裁/平成27年12月27日/平成25年(行ウ)第112号
確定
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性〕
 Aが本件精神障害を発病した時期は正確には明らかではないが、遅くとも平成二〇年一二月中旬頃には発病していたといえるから、これを発病の時期とみて、以下では、原則として認定基準に照らし、必要に応じてこれを修正しつつ、具体的出来事及びこれを前提とする心理的負荷の強度を判断し、その業務起因性を検討する。
 本件精神障害の発病に関与する業務による出来事は複数あるが、いずれの心理的負荷の程度も、単体で「中」ないし「強」とみるべきであるし、少なくとも、各出来事が関連して生じているということができるから、その全体を一つの出来事として評価すれば、その全体評価は「強」に当たるというべきである。
 そして、本件全証拠によっても、Aには、業務以外の心理的負荷及び個体側要因は認められない。(略)したがって、本件精神障害の発病には業務起因性が認められ、Aは本件精神障害の発病による影響の下で本件自殺に至ったというべきである。