ID番号 | : | 09130 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴、同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 医療法人社団Y事件事件 |
争点 | : | 医師の固定残業給の有効性が問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1) 医療法人Y(被告、被控訴人兼附帯控訴人)との間で雇用契約を締結し、Yが運営する病院に医師として勤務していたX(原告、控訴人兼附帯被控訴人)が、〈1〉Yに解雇されたが、当該解雇は解雇権の濫用で無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、〈2〉解雇後本判決確定の日まで毎月の未払給与の支払、〈3〉平成二四年一二月支給分の賞与及びこれに対する賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃金支払確保法」という。)所定の遅延損害金の各支払、〈4〉時間外割増賃金及びこれに対する賃金支払確保法所定の遅延損害金の各支払、〈5〉労働基準法一一四条に基づき、上記時間外割増賃金と同額の付加金及びこれに対する民法所定の遅延損害金の各支払、〈6〉Yによる解雇によって精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づき、損害賠償及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求めた事案である。 (2) 横浜地裁は、Xの割増賃金請求を一部認容したため、Xが全部認容を求めて控訴し、Yも敗訴部分の取消を求めて附帯控訴したところ、東京高裁はXの控訴を棄却、Yの附帯控訴を認容し、Xの請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 民法494条 民法709条 労働契約法16条 労働基準法37条 |
体系項目 | : | 賃金(民事)/割増賃金/(6) 固定残業給 |
裁判年月日 | : | 2015年10月7日 |
裁判所名 | : | 東京高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ネ)3329号/平成27年(ネ)4260号 |
裁判結果 | : | 控訴棄却、附帯控訴認容 |
出典 | : | 判例時報2287号118頁 労働経済判例速報2326号6頁 労働法律旬報1893号59頁 |
審級関係 | : | 一審 横浜地裁/平成27年4月23日/平成25年(ワ)第689号 上告・上告受理申立て |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金(民事)/割増賃金/(6) 固定残業給〕 本件雇用契約及び本件時間外規程に基づき、XとYとは、時間外労働に対する賃金については、本件時間外規程に基づき支払われる時間外労働賃金及び当直手当以外の通常の時間外労働賃金については、年俸一七〇〇万円(月額一二〇万一〇〇〇円)に含まれる旨をXにおいても承知し、合意したものといえ、かつ、上記合意に係る本件雇用契約及び本件時間外規程は有効と認めるのが相当と判断する。 時間外労働賃金の合意に係る本件雇用契約及び本件時間外規程については、上記aのとおり、医師としての職務及び責任に照らし合理性があるものと認められ、上記bのとおり、使用者の管理監督下における労務の提供という面においても、Xは自らの労働の提供について自らの裁量で律することができたものといえ、特に労働者としての保護に欠けるおそれがなく、上記cのとおり、月額一二〇万一〇〇〇円(年俸一七〇〇万円)というXの給与額は、通常業務の延長としての時間外労働に係る賃金分が含められていると解しても不合理とはいえない好待遇な金額といえ、この点においても特に労働者としての保護に欠けるおそれがないということができ、更に、上記dのとおり、明白区分性の点からも不都合はないというべきであるから、上記時間外労働賃金の合意に係る本件雇用契約及び本件時間外規程は有効と認めるのが相当というべきである。したがって、深夜割増賃金及び月六〇時間を超えた場合の割増賃金を除く、通常業務の延長とみなされる時間外労働賃金については、月額一二〇万一〇〇〇円に含めて支給されたものと解するのが相当というべきである。 |