ID番号 | : | 09133 |
事件名 | : | 賃金等、損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | トヨタ自動車ほか事件 |
争点 | : | 定年前と全く異なる職種における定年後再雇用提示の違法性が問われた事案(労働者逆転勝訴) |
事案概要 | : | (1) Y(被告、被控訴人)で正社員として雇用されていたX(原告、控訴人)が、シュレッダー機ごみ袋交換及び清掃(シュレッダー作業は除く)、再生紙管理、業務用車掃除、清掃(フロアー内窓際棚、ロッカー等)、その他Yや上司の指示する業務という従前とは全く異なる内容の再雇用条件を提示されたため、これを拒否したところ定年後再雇用されなかったことにつき、その違法性を主張して、地位確認及び未払賃金の支払いを、またYから組織的ないじめを受けたと主張して、損害賠償の支払いを求めた事案である。 (2) 名古屋地裁は、Xの請求をいずれも棄却したため、Xが控訴したところ、名古屋高裁は地位確認請求については原審を維持したものの、定年後再雇用されなかったことにつき不法行為の成立を成立を認め、一部Xの請求を認容した。 |
参照法条 | : | 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2016年9月28日 |
裁判所名 | : | 名古屋高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成28年(ネ)149号 |
裁判結果 | : | 原判決一部変更、控訴一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2342号100頁 労働判例1146号22頁 労働経済判例速報2300号3頁 |
審級関係 | : | 一審 名古屋地裁/平成28年1月7日/平成27年(ワ)62号/平成27年(ワ)500号 確定 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕 改正高年法は(略)六〇歳の定年後、再雇用されない男性の一部に無年金・無収入の期間が生じるおそれがあることから、この空白期間を埋めて無年金・無収入の期間の発生を防ぐために、老齢厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢に到達した以降の者に限定して、労使協定で定める基準を用いることができるとしたものと考えられる。 事業者においては、労使協定で定めた基準を満たさないため六一歳以降の継続雇用が認められない従業員についても、六〇歳から六一歳までの一年間は、その全員に対して継続雇用の機会を適正に与えるべきであって、定年後の継続雇用としてどのような労働条件を提示するかについては一定の裁量があるとしても、提示した労働条件が、無年金・無収入の期間の発生を防ぐという趣旨に照らして到底容認できないような低額の給与水準であったり、社会通念に照らし当該労働者にとって到底受け入れ難いような職務内容を提示するなど実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められない場合においては、当該事業者の対応は改正高年法の趣旨に明らかに反するものであるといわざるを得ない。 改正高年法の趣旨からすると、Yは、Xに対し、その六〇歳以前の業務内容と異なった業務内容を示すことが許されることはいうまでもないが、両者が全く別個の職種に属するなど性質の異なったものである場合には、もはや継続雇用の実質を欠いており、むしろ通常解雇と新規採用の複合行為というほかないから、従前の職種全般について適格性を欠くなど通常解雇を相当とする事情がない限り、そのような業務内容を提示することは許されないと解すべきである。 そして、YがXに提示した業務内容は、上記のとおり、Xのそれまでの職種に属するものとは全く異なった単純労務職としてのものであり、地方公務員法がそれに従事した者の労働者関係につき一般行政職に従事する者とは全く異なった取扱いをしていることからも明らかなように、全く別個の職種に属する性質のものであると認められる。 したがって、Yの提示は、Xがいかなる事務職の業務についてもそれに耐えられないなど通常解雇に相当するような事情が認められない限り、改正高年法の趣旨に反する違法なものといわざるを得ない。(略)Xの従前の行状にYらが指摘するような問題点があることを考慮しても、Yの提示した業務内容は、社会通念に照らし労働者にとって到底受け入れ難いようなものであり、実質的に継続雇用の機会を与えたとは認められないのであって、改正高年法の趣旨に明らかに反する違法なものであり、Yの上記一連の対応は雇用契約上の債務不履行に当たるとともに不法行為とも評価できる。 |