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ID番号 09135
事件名 各地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 日本郵便(期間雇用社員ら・雇止め)事件
争点 更新限度年齢を定めた協約に基づく雇止めの有効性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) Y(被告、被控訴人)との間で期間の定めのある雇用契約を締結していたX(原告、控訴人)らが、Yから雇止めされたことにつき、Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、未払賃金等の支払を求めるとともに、上記雇止めがXらの雇用継続に対する合理的期待を違法に侵害し、精神的損害を与えたと主張し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料及び弁護士費用の合計110万円等の支払を求める事案である。
(2) 東京地裁は、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないとし雇止めは有効であるとしたため、Xが控訴し、追加請求したところ、東京高裁も雇止めは有効であるとした。
参照法条 労働契約法7条
労働契約法19条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事)/解雇権の濫用
裁判年月日 2016年10月5日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ネ)4778号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1153号25頁
審級関係 一審 東京地裁/平成27年7月17日/平成23年(ワ)第39604号
上告、上告受理申立て
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
〔解雇(民事)/解雇権の濫用〕
 Xらは、Yとの雇用関係に移行した後も、基本的な雇用期間を6か月としながら、冒頭の雇用契約も含めて、X1、X2、X3、X5及びX8は各8回、X6はJPエクスプレスにおける就業期間を除いても7回(Yでの再採用を含めれば8回)、X4は6回、X7は9回、X9はJPエクスプレスにおける就業期間を除いても8回(Yでの再採用を含めれば9回)の契約更新が行われており、しかも、期間満了予告通知書によって通知された雇用条件を前提に契約の更新を希望する場合、当該期間雇用社員のYに対する申出を必ずしも必要としていない運用がされていたのであり(、Xらを含めた期間雇用社員も、期間雇用社員全体が多数回の雇用契約の更新をされていることを認識していた上、Xら期間雇用社員各自の業務内容も各更新の前後において継続されていたのであるから、Yにおける期間雇用社員の契約更新手続が形骸化し、実質的に期間の定めのない雇用契約と同視し得る状態になっていたものと認めるのが相当である。
 (Xらは)勤務実績が不良で就業に適しない場合には該当しないことが認められる。(略)Yが、本件雇用契約について、所定の雇用期間が満了したことを理由として、本件雇止めを行うことは、合理的理由及び社会的相当性がなく、したがって、本件雇止めは、解雇権濫用法理の類推適用により違法無効と評価されることになる。
 本件上限規則は、Yの期間雇用社員の雇用期間の更新限度を65歳までに制限するもので、直接的に定年制を規定するものではないが、仮に期間雇用社員に係る雇用契約が労働契約法19条の適用を受けるものであれば、実質的に定年制の意義を持つ制度を規定したものとなる。(略)
 これらの最低限60歳の定年年齢を確保した上で、事業主に対し、65歳までの雇用を確保する措置を講ずべきことを義務づける法制度の有り様にかんがみると、有期雇用契約に基づく労働者についても、同程度の保護が与えられることが望ましいが、それ以上に、65歳更新限度の定めをおくことをもって、公序良俗に反するとはいえない。また、このような有期雇用契約に基づく労働者について一定の年齢をもって更新の限度と定めることが労働契約法19条の規定に反し許されないと解する理由もない。(略)
 有期雇用契約の更新につき65歳更新限度を労働条件として定めたaaユニオンとYとの間の本件上限協約は規範的効力を有しており、X3及び同X7を除くXらに対する本件雇止めを根拠づけるものになると認められる(略)本件雇止めは、本件上限規則(X3及びX7を除くXらについては重畳的に本件上限協約)により根拠づけられた適法なものである以上、これをもって本件雇用契約はいずれも終了したのであり、そうすると、争点〈14〉についての判断をするまでもなく、Xらの雇用契約に基づく未払賃金及びその遅延損害金の支払請求は理由がないことになる。