ID番号 | : | 09140 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 長澤運輸事件 |
争点 | : | 嘱託社員と正社員との間の労働条件の相違の違法性が問われた事案(労働者逆転敗訴) |
事案概要 | : | (1)Y(被告、控訴人)を定年退職した後にYとの間で期間の定めのある労働契約を締結して就労しているX(原告、被控訴人)らが、Xらと期間の定めのない労働契約を締結している従業員との間に不合理な労働条件の相違が存在すると主張して、主位的には、当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり、Xらには一般の就業規則等の規定が適用されることになるとして、Yに対し、当該就業規則等の規定の適用を受ける労働契約上の地位の確認を求めるとともに、労働契約に基づき、当該就業規則等の規定により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、予備的には、Yが上記労働条件の相違を生じるような嘱託社員就業規則を制定し、Xらとの間で嘱託社員労働契約書を締結し、これらを適用して本来支払うべき賃金を支払わなかったことは、労働契約法20条に違反するとともに公序良俗に反し、違法であるとして、Yに対し、民法709条に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 東京地裁は、Xらと正社員との労働条件の相違は不合理であるとして、Xらの請求を一部認容したため、Yが控訴したところ、東京高裁は、当該相違は不合理でないとして、Xの請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 民法709条 労働契約法20条 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/均等待遇 |
裁判年月日 | : | 2016年11月2日 |
裁判所名 | : | 東京高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成28年(ネ)2993号 |
裁判結果 | : | 認容(原判決取消) |
出典 | : | 判例時報2331号108頁 判例タイムズ1432号77頁 労働判例1144号16頁 労働経済判例速報2293号3頁 労働法律旬報1881号64頁 |
審級関係 | : | 一審 東京地裁/平成28年5月13日/平成26年(ワ)第27214号 上告・上告受理申立 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇〕 労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として、〈1〉職務の内容、〈2〉当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか、〈3〉その他の事情を掲げており、その他の事情として考慮すべきことについて、上記〈1〉及び〈2〉を例示するほかに特段の制限を設けていないから、労働条件の相違が不合理であるか否かについては、上記〈1〉及び〈2〉に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきものと解される。 前記のとおり、定年退職者の雇用確保措置として、継続雇用制度の導入を選択することは高年齢者雇用安定法が認めるところであり、その場合に職務内容やその変更の範囲等が同一であるとしても、賃金が下がることは、広く行われていることであり、社会的にも容認されていると考えられるから、前記のYの意図は、労働契約法20条にいう不合理性を当然に基礎付けるものではない。そして、平均して2割強という賃金の減額率が、不合理といえないことも前記のとおりである。 以上によれば、本件相違は、労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして不合理なものであるということはできず、労働契約法20条に違反するとは認められない。 |