全 情 報

ID番号 09148
事件名 地位保全の仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
いわゆる事件名 ゴールドルチル(抗告)事件
争点 負傷したダンプカー運転手の合意退職の有効性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 土木運送業を営んでいたAとの間で、ダンプカー運転手として期間の定めのない本件労働契約を締結していたX(抗告人)が、Aから事実上解雇されたため、その無効を主張してAが法人成りしたY(相手方)に対して労働契約上の地位確認および未払賃金の支払いを仮に求め、Yが本件労働契約の合意解約ないし解雇による終了を主張していた事案である。
(2) 名古屋地裁は、本件労働契約は合意解約により終了したとしてXの申立てを却下したので、Xが本件抗告をした。
参照法条
体系項目 退職/合意解約
解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条)/(4) 19条違反の解雇の効力
裁判年月日 2016年1月11日
裁判所名 名古屋高裁
裁判形式 決定
事件番号 平成28年(ラ)第141号
裁判結果 原決定一部取消、一部却下
出典 労働判例1156号18頁
審級関係
評釈論文 古賀修平「労働者の言動と合意解約の成否―ゴールドルチル(抗告)事件(平成29.1.11名古屋高決)」季刊労働法261号208~209頁
判決理由 〔退職/合意解約〕
 Xは、平成27年5月28日、Aに対し、負傷のため翌日は出勤しない旨述べ、Aから、負傷の状況確認等のため出社するよう求められたのに対し、これを拒否し、数日後には、Aからの電話に応じなくなったことが一応認められるが、これらの経緯をもって、本件合意退職等があったものと評価することはおよそ困難といわざるを得ない。
 Aは、Xの求めに応じ、平成27年6月19日、Xの雇用保険被保険者離職票を作成し、Xに交付したことが一応認められる。しかし、これらやりとりは、Xが、Aから、他の会社にXを紹介しようとしたが断られた旨の手紙を受け取った後になされ、雇用関係が既に終了しているかのようなAの対応を前提とするものであって、かつ、負傷により通院中であり、当面の生活費にも困っている中で金銭給付を受けるためになされたものである。そのような事情を踏まえると、上記やりとりをもってXが退職を受け入れ本件合意退職等をしたものと一応認めるには足りないというべきである。
〔解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条)/(4) 19条違反の解雇の効力〕
 Xが、本件労働契約に係る就労の際に上記のとおり後日に診断されたとおりの負傷(以下「本件負傷」という。)をしたものと一応認められるというべきであり、Xは就労中に本件負傷をしたものと一応認められ、虚偽の負傷を理由に労務提供を拒否し、労災の申請を行なおうとしたとはいえず、本件解雇は、業務上の負傷である本件負傷のために休業する期間になされたものであって、労働基準法19条1項に反し許されないから、無効である。