ID番号 | : | 09158 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | ジブラルタ生命(旧エジソン生命)事件 |
争点 | : | 職種限定の有無と配転を前提とした懲戒解雇の有効性が争われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) 平成22年8月1日にAIGエジソン生命保険株式会社(エジソン生命)に入社し、平成24年1月1日にY社(被告、被控訴人)がエジソン生命を吸収合併する前は同社のソリューションプロバイダーリーダー(SPL)であり、同合併後は、Y社ののライフプランコンサルタント(LC)(通常の営業社員)としての扱いを受けていたX(原告、控訴人)が、Yから同年6月20日付けで懲戒解雇(本件懲戒解雇)されたことについて、本件懲戒解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払賃金の支払いを、ならびに本件懲戒解雇は不法行為に該当すると主張して、慰謝料の支払いを求めた事案である。 (2) 名古屋地裁は、Y社懲戒規定に該当する行為があり、それ自体で懲戒解雇をするのが合理的かつ相当な判断であるというべきであるとして、Xの請求をいずれも棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法3条 労働契約法15条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2017年3月9日 |
裁判所名 | : | 名古屋高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ネ)973号 |
裁判結果 | : | 原判決取消、認容 |
出典 | : | 労働判例1159号16頁 |
審級関係 | : | 上告、上告受理申立て |
評釈論文 | : | 山下昇・法学セミナー63巻1号103頁 長谷川聡・労働法学研究会報69巻2号22~27頁 名古道功・民商法雑誌154巻2号144~154頁 細川良(労働判例研究会)・法律時報90巻9号174~177頁 小宮文人・労働判例1179号91~97頁 |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕 Xとエジソン生命との労働契約においては、少なくとも固定給の保証された入社後2年程度の間は、Xの職種をSPLに限定し、その業務内容としては、SPの採用育成及びユニットの運営等に限定されており、直接的な営業活動を行うことは義務的な業務とはされていなかったものと認められ、その限度での職種限定合意は存在したものということができる。 Yは、職種及び職場限定の合意があって、チーフトレーナー、営業所長、シニアパートナーのいずれの職種の移行に応じられず、応じないことが許容されるXに対し、その他の選択肢を一切示さないまま、Xをしてその最も意に沿わない職種であって、かつ、待遇面でも明らかに不利益となることが明白なLCとして取り扱ったことは、正当な理由のない配転命令がなされたものというべきであって、しかも、管理職から一般社員への懲罰的な降格人事とも解されるから、人事権の濫用として無効であるといわざるを得ない。 Yは、Xに対し、人事権を濫用して一般の営業職員(LC)への配転を命じたものであり、かかる配転命令が無効である以上、Xが一般の営業職員(LC)を前提として、意図的に保険契約の募集業務を懈怠したこと等を理由とする本件懲戒解雇もまた理由がなく許されない。 |