ID番号 | : | 09159 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴、同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 野村證券事件 |
争点 | : | インサイダー取引および顧客情報漏洩を理由とする懲戒解雇の違法性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) Y(野村證券、被告・控訴人)との間で労働契約を締結していたX(原告・被控訴人)が、インサイダー取引および顧客情報漏洩を理由としてYからなされた懲戒解雇は無効であると主張して、地位確認及び未払賃金の支払いを、また懲戒解雇が不法行為に当たると主張して、慰謝料1000万円の支払いを求めた事案である。 (2) 東京地裁は、地位確認請求を認容し、月例賃金等を求める部分を認容、賞与等を求める部分を却下、慰謝料請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法 15条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(6) 信用失墜 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(17) 守秘義務違反 懲戒・懲戒解雇/懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 2017年3月9日 |
裁判所名 | : | 東京高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成28年(ネ)1730号/平成28年(ネ)3767号 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働判例1160号28頁 |
審級関係 | : | 確定 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(6) 信用失墜〕 第1懲戒事由は、Xが、社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視委員会の勧告(本件勧告)を受け、報道されたというものであり、Yは、これら一連の事実関係によってYの名誉又は威信が傷つけられたが故に、就業規則42条11号所定の懲戒事由に該当すると主張するが、本件勧告及び上記報道によるYの名誉又は威信の毀損について、Xに帰責事由がなければならないというところ、本件勧告が認定した課徴金納付命令の要件となる事実のうち、Xがその職務に関し重要事実を知った(金融商品取引法166条1項5号)との事実については、前判示のとおりこれを認めるに足りず、その結果、Xが社外の者に対して重要事実を伝達した旨の事実も認められないことになるため、Xの帰責事由を認めることはできず、就業規則所定の懲戒事由には該当しない。 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(17) 守秘義務違反〕 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒手続〕 第2懲戒事由は、Xが社外のBに対してYの顧客情報を漏えいしたものであり、これが機密情報に関する会社の規則に違反し、就業規則42条14号所定の懲戒事由に該当するとYは主張し、Yが顧客情報の漏えいであると主張する会話の一部が就業規則所定の懲戒事由に該当するといえるところ、Xは、顧客情報の漏えいに当たる会話をしたとして注意や指導を受ける機会がないまま、突如として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を受けたのであり、本件懲戒解雇は、懲戒事由に該当すると認められる事実について弁解の機会を全く与えることなく行ったという点において、手続的にも妥当を欠くものであったといわざるを得ず、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることができず、懲戒権を濫用したものとして、無効であるというべきである。 |