全 情 報

ID番号 09160
事件名 休業補償給付不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・半田労基署長(医療法人B会D病院)事件
争点 パワハラ、退職勧奨・強要を受けた労働者の精神障害発症の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) X(原告・控訴人)が、勤務先であった医療法人N会O病院(本件病院)において、いわゆるパワーハラスメントや退職の勧奨ないし強要を受けて精神障害を発病したとして、労災保険法に基づく休業補償給付を請求したところ、処分行政庁(D労働基準監督署長)から業務上の疾病とは認められないとして同給付を支給しない旨の処分を受けたため、Y(国、被告・被控訴人)に対して、その取消しを求めた事案である。
(2) 名古屋地裁は、Xが業務上受けた心理的負荷が強かったとは認められないとして業務上の疾病であることを否定し、Xの各請求をいずれも棄却した。
参照法条 労働者災害補償保険法13条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性
裁判年月日 2017年3月16日
裁判所名 名古屋高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(行コ)63号
裁判結果 原判決取消、認容
出典 労働判例1162号28頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性〕
 Xは、P技師長との確執により度々口論となり、退職を示唆する発言や怒鳴られることもあったため、平成22年11月5日、医事課長に対してXのメモを提出し、職場環境の改善を促したが、これにより職場環境を改善する措置が採られることはなく、かえって、日頃からP技師長との確執によりストレスを感じていたところに、4者面談において、約3時間もの間、一方的な理由を告げられ退職を迫られたのであり、これらを全体として評価すると、Xと同種の平均的労働者からみても、相当大きな精神的負担を受ける出来事であったと認められ、本件4者面談から数日のうちにXが本件疾病を発症したという時間的経過とも合致し、控訴人は業務により過重な心理的負荷を受け、かつ、他に業務外の心理的負荷や控訴人の個体側の脆弱性も認められないことからすれば、本件疾病は、控訴人の従事する業務に内在する危険が現実化したものと評価できるから、業務との相当因果関係があると認められる。