ID番号 | : | 09164 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | エイボン・プロダクツ事件 |
争点 | : | 会社分割の際のいわゆる5条協議の適法性が争われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | 化粧品類及びその関連製品の製造、加工、輸出入及び売買等を目的とする株式会社であるY(被告)が会社法上の会社分割(新設分割)の方法によって自社工場を分社化した際に、同会社分割により設立された会社(新設会社)においてYから労働契約を承継するとされたX(原告)が、Yに対し、〈1〉主位的に、上記労働契約の承継は、Xとの関係で手続に瑕疵があるので、Xはその効力を争うことができる旨を主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、同契約に基づく賃金及び賞与の支払を求め、〈2〉予備的に、上記新設会社の一人株主であったYが、会社分割前の説明に反して、同会社分割の1年半後に同新設会社の解散決議をして、同会社の従業員であったXを失職させるに至った旨やこの失職を回避するために必要な措置を講じることを怠った旨等を主張して、故意又は過失による不法行為に基づく損害賠償の支払を求める事案である。 |
参照法条 | : | 商法514条 会社法763条 会社法764条 民事訴訟法134条 民事訴訟法157条 労働契約法 会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律3条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事)/労働契約の承継/(3)新会社設立 |
裁判年月日 | : | 2017年3月28日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ワ)10139号 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例1164号71頁 労働経済判例速報2317号3頁 労働法律旬報1891号78頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 穂積匡史・労働法律旬報1891号34~35頁 竹内(奥野)寿・ジュリスト1509号4~5頁 穂積匡史・季刊労働者の権利320号154~157頁 田中勇気・労働経済判例速報2317号2頁 徳住堅治(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1514号120~123頁 根本到・法学セミナー63巻2号125頁 西頭英明・経営法曹196号29~36頁 春田吉備彦・労働法学研究会報69巻6号20~25頁 |
判決理由 | : | :〔労働契約(民事)/労働契約の承継/(3)新会社設立〕 Yは、本件会社分割に係る事項について承認する株主総会の開催日から逆算して当初想定される通知期限日までに、Xに対して、少なくとも、本件会社分割の目的や、それによる労働条件の変更が特段ない旨を大まかに説明していたものといえるが、Xは自身の労働契約について、本件会社分割に伴う労働契約の承継に関する希望を聴取されたのではなく、むしろ、労働組合に加入したまま、冷遇されつつも、Yに対してリストラの不当性を訴えて争い続けるか、それとも、労働組合を脱退してオアスの代表取締役に就任する予定であるC工場長の庇護の下でオアスの従業員として勤務するかの選択を迫られる中で、後者の道を選ばざるを得ないと考えるに至ったにすぎないものといえ、そのような話合いの内容は、原告が労働契約をオアスに承継されることに関する希望の聴取とは程遠く、これをもって5条協議というに値するか甚だ疑問であるし、少なくとも、法が同協議を求めた趣旨に反することが明らかであると認められる。 本件会社分割に伴ってXY間でもたれた話合いの内容は、少なくとも、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるから、Xは、本件会社分割によるYからオアスへの労働契約承継の効力を争うことができるものといえ、XのYに対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求は理由がある。 |