全 情 報

ID番号 09178
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 イオンディライトセキュリティ事件
争点 警備員の仮眠時間等の労働時間該当性などが問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 Y(被告)で警備業務に従事していたX(原告)が雇用契約に基づき、Yに対して、仮眠時間も労働時間に該当する等として未払割増賃金の支払、および付加金の支払、ならびに、配転命令および教本の文字起こしを命じる業務命令がハラスメントにあたるとして、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事案である。
参照法条 民法709条
労働契約法
労働基準法32条
労働基準法37条
労働基準法114条
体系項目 労働時間(民事)/労働時間の概念/(17) 仮眠時間
裁判年月日 2017年5月17日
裁判所名 千葉地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)1447号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1161号5頁
労働経済判例速報2318号3頁
審級関係 確定
評釈論文 黒葛原歩・季刊労働者の権利322号105~110頁
山口浩一郎(判例実務研究会)・労働法令通信2474号30~32頁
判決理由 :〔労働時間(民事)/労働時間の概念/(17) 仮眠時間〕
 YのN店でXは仮眠時間及び休憩時間の間、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報等に対して直ちに相当の対応をすることが義務付けられており、実作業への従事は、その必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないというべきであるから、仮眠時間及び休憩時間は、全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができ、労基法上の労働時間に当たるというべきである。
 YのE店においては、Xが勤務していた期間又はこれに近接した時期において、仮眠時間中又は休憩時間中の警備員が発報等により対応を求められる事態が、一定の頻度で生じていたというべきである。そうすると、客観的に見て、仮眠時間及び休憩時間の間、発報等により警備員が対応を求められる可能性が著しく乏しい状況にあったということはできず、不活動時間も含めてYの指揮命令下に置かれていたものであるから、本件仮眠時間及び本件休憩時間は労基法上の労働時間に当たるものというべきである。
〔労働時間(民事)/労働時間の概念/(3) 朝礼〕
 Xは、警備員としてYのO店に勤務するに当たり、朝礼への出席及びこれに先立つ制服への着替えを義務付けられ、また、これらを事業場内において行うこととされていたというべきであって、上記特段の事情についての具体的な主張立証もないから、上記朝礼及び着替えに要する時間は、Yの指揮命令下に置かれていたものと評価することができる。
〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕
 本件配転命令及び本件業務命令は、業務上の必要性が存しないものではなく、かつ、不当な動機・目的をもってなされたものであるとも、Xに対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとも認められないから、権利の濫用になるものではなく、Xに対する不法行為を構成するものでもないというべきである。