ID番号 | : | 09182 |
事件名 | : | 分限免職処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国・厚生労働大臣(元社保庁職員ら)事件 |
争点 | : | 社保庁廃止に伴う分限免職処分の違法性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | 社保庁が廃止されたことに伴い、社保庁長官又は東京社保局長(以下「社保庁長官等」という。)が、国公法七八条四号に基づいて、平成二一年一二月二五日付けで同月三一日限り社保庁の職員であったXらを分限免職する旨の各処分(以下「本件各処分」といい、各Xに対する処分を「本件処分」ともいう。)をしたことにつき、Xらが、Y(国、被告)に対し、〈1〉本件各処分は、同号の要件に該当せず、仮に同号の要件に該当するとしても、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであると主張して、本件各処分の取消しを求めるとともに、〈2〉本件各処分が不法行為又は債務不履行に当たると主張して損害賠償の支払を求めた事案である。 |
参照法条 | : | 日本国憲法15条 日本国憲法25条 日本国憲法27条 国家賠償法1条 国家賠償法4条 行政事件訴訟法3条 民法415条 民法724条 国家公務員法78条 日本年金機構法 |
体系項目 | : | 解雇(民事)/整理解雇/(3) 整理解雇の回避努力義務 |
裁判年月日 | : | 2017年6月29日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(行ウ)720号/平成26年(行ウ)56号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(56号)、棄却(720号) |
出典 | : | 判例時報2361号91頁 判例タイムズ1447号144頁 労働判例1171号44頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | :〔解雇(民事)/整理解雇/(3) 整理解雇の回避努力義務〕 本件の分限免職処分は、被処分者に何ら責められるべき事由がないにもかかわらず、その意思に反して免職という重大な不利益を課す処分であるから、同号の解釈上、本件の処分権者である社保庁長官等は、最終的な分限免職処分の段階に至るまでに、可能な範囲で、廃職の対象となる官職に就いている職員について、機構への採用、他省庁その他の組織への転任又は就職の機会の提供等の措置を通じて、分限免職処分を回避するための努力を行うことが求められるというべきである。このような努力の内容や程度については、法令上、明文の規定はなく、基本的に社保庁長官等の裁量に委ねられているというべきであるが、例えば、社保庁長官等において分限免職処分を回避するための容易かつ現実的な努力をすることが可能であり、当該努力をしておれば、特定の職員について分限免職処分を回避することができた相応の蓋然性があったにもかかわらず、社保庁長官等において当該努力を怠った結果、分限免職処分に至ったものと認められるような事情があるときは、当該職員に係る分限免職処分については、裁量権の逸脱又は濫用があった違法なものとして、その効力は否定されるべきである。 X1及びX2については、社保庁長官等が本件処分をしたことについて、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであるということはできないから、適法なものというべきであるが、他方、X3に対する本件処分は、社保庁長官等は、原告Aの分限免職を回避するための容易かつ現実的な努力として、機構において本件基本計画段階に比して現に欠員が生じている人員数に相当する正規職員の追加募集をするよう働きかける程度のことは可能であったと考えられるにもかかわらず、これすらも怠ったものであるから、原告Aに対する分限免職回避努力義務に違反したものといわざるを得ず、社保庁長官等がその裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用してなされたものとして違法となるというべきである。 |