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ID番号 09185
事件名 公務外災害認定処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 地公災基金岐阜県支部長(A市職員)事件
争点 精神疾患に罹患していた市職員の勤務中の自殺についての公務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 岐阜市の職員であり、岐阜市役所都市建設部公園整備室長として勤務していたAが、平成19年11月26日、自殺したこと(以下「本件災害」という。)について、亡Aの妻であるX(原告、被控訴人)が、亡Aは、業務が特殊かつ困難な公園整備室の室長となったが、その当時、例年になく困難な業務が多かったこと、都市建設部長や副市長からパワーハラスメントを受けたこと、公園遊具の設置に関し、決裁を後回しにされた上、押印を強要されたこと、降格覚悟で出した異動希望がかなわなかったこと、休日でも十分な休養を取れない状態にあったことなどから、強い精神的負荷を受け、うつ病を発症し、これにより自殺したものであり、本件災害は公務に起因するものであると主張して、処分行政庁に対し、公務災害の認定請求をしたところ、処分行政庁から、平成23年8月1日付けで、本件災害について公務外の災害と認定する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受け、これを不服として地方公務員災害補償基金岐阜県支部審査会に対してした審査請求が平成25年3月15日付けで棄却され、地方公務員災害補償基金審査会に再審査請求をしたが、再審査請求をした日の翌日から起算して三か月を経過しても裁決がないことから、本件処分の取消しを求める事案である。
(2) 岐阜地裁は、亡Aは、強度の精神的負荷を与える事象を伴う業務に従事したため、遅くとも平成19年11月頃までには抑うつ状態となったということができ、亡Aが従事した公務と上記精神疾患との間には相当因果関係が認められ、上記精神疾患と本件災害との間にも相当因果関係が認められるから、本件災害には公務起因性が認められるとして、本件処分を取り消し、Xの請求を理由があるものとして認容した。
参照法条 地方公務員災害補償法31条
地方公務員災害補償法45条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性
裁判年月日 2017年7月6日
裁判所名 名古屋高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)7号
裁判結果 控訴棄却
出典 判例時報2367号76頁
労働判例1171号5頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 :〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性〕
 亡Aは、業務の面からも、人間関係の面からも、精神的負荷のかかった状態にあり、肉体的にも精神的にも疲労のたまっている状態であったところ、本件遊具の設置問題があり、後閲問題が発生し、後閲問題により、自尊心を深く傷つけられ、この問題による亡Aへの精神的負荷は、それ以前のP1部長との関係から生じた精神的負荷や日常業務による肉体的、精神的疲労とも相まって、極めて強いものであったと認められ、亡Aの様子から精神疾患を発症していたであろうことが周りから見ても明らかであったにもかかわらず、休暇を取得できない状況であったことに鑑みれば、亡Aの時間外労働が長時間であったと認めることはできないとしても、亡Aにかかる精神的負荷は一般的にみても強度の域に達していたものということができる。以上を踏まえると、亡Aは、強度の精神的負荷を与える事象を伴う業務に従事したと認めることができ、本件災害当時抑うつ状態にあった亡Aは、抑うつ状態という精神疾患から、本件災害当日に発生した公園内での事故の報告を受けたことを引き金に、突然発生する事故等にこれ以上耐え切れなくなり、発作的に岐阜市役所本庁舎八階から飛び降りて、本件災害が発生したものと認められるから、上記精神疾患と本件災害との間の相当因果関係は肯定することができ、公務と本件災害との間には相当因果関係が認められることになるから、本件災害には公務起因性が認められる。