ID番号 | : | 09189 |
事件名 | : | 免職処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国・広島拘置所長(法務事務官)事件 |
争点 | : | 条件付採用期間中の国家公務員への労基法19条1項の適用の有無などが問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | 分限免職処分(以下「本件処分」という。)を受けたX(原告)が、〈1〉本件処分は裁量権を逸脱し、また、労働基準法19条1項に違反し違法である等と主張して、Y(国、被告)に対し、本件処分の取消しを求めるとともに、〈2〉職場で暴行脅迫等の違法な行為を受けたために長期間の休暇を余儀なくされ、違法な本件処分により就労できない状況にある旨主張して、国家賠償法1条1項に基づき、休業損害(本件処分までの病気休暇期間の賃金相当額及び本件処分後の賃金相当額)、慰謝料等の損害賠償を求める事案である。 |
参照法条 | : | 労働基準法19条1項 国家賠償法1条1項 |
体系項目 | : | 解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条) 解雇(民事)/解雇権の濫用 労基法の基本原則(民事)/国に対する損害賠償請求 |
裁判年月日 | : | 2017年8月2日 |
裁判所名 | : | 広島地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(行ウ)29号 |
裁判結果 | : | 主位的請求棄却、予備的請求一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1169号27頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇(民事)/解雇制限 (労基法19条)〕 国家公務員に関する心身の故障による免職については、既に労働基準法19条1項とは別に法律が制定実施されているというべきである。条件付採用期間中の国家公務員の分限免職処分の制限についても、既に労働基準法19条1項とは別に法律が制定実施されているというべきである。したがって、国家公務員(一般職)および条件付採用期間中の国家公務員についても、労働基準法19条1項の適用はないものと解するのが相当である。 〔解雇(民事)/解雇権の濫用〕 条件付採用期間中の職員といえども、既に試験等の過程を経て勤務し、現に給与の支給も受け正式採用になることの期待を有するものであるから、もとより、それは純然たる自由裁量ではなく、その処分が合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは裁量権を逸脱・濫用したものとして違法というべきであるが、Xの勤務実績は不良といわざるを得ず、条件付採用期間中のXを引き続き任用しておくことが適当でないとの処分行政庁の判断には合理性が肯定できるというべきであるから、本件処分に裁量権の逸脱・濫用は認められない。 〔労基法の基本原則(民事)/国に対する損害賠償請求 〕 本件指導行為のうち、S副看守長がXの胸倉を掴んで引き寄せ、激しい口調で詰問した行為は、巡回業務を懈怠した原告に対する指導としてみても、不適切で行き過ぎた行為であるといわざるを得ず、国家賠償法上違法なものというべきである。 Xが所持、利用している他人名義のキャッシングローンカード及びそれによる借入状況等について調査を行うため、Xを伴ってX方に赴き、X方を捜索した本件捜索は、Xに対して任意に関係書類を提出する機会を十分に与えないまま行われ、また、Xからの承諾を得る方法において相当性を欠くものであって、任命権者の調査権限を逸脱したものとして国家賠償法上違法というべきである。 S副看守長が腹を立ててそのような行為に及んだのは、Xが故意に巡回を懈怠した上に虚偽の説明・報告をしたためであり、そのような事態に至った原因の一端はXにもあるといえること、本件捜索にあたってえは、一応Xへの了承を求め、Xもこれを明確に拒否していないことなどからすると、あわせて慰謝料20万円とみとめるのが相当である。 |