全 情 報

ID番号 09190
事件名 遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 国・宮崎労基署長(宮交ショップアンドレストラン)事件
争点 心停止により死亡した従業員の業務起因性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1)本件会社Y(被告、控訴人)で営業部に所属し、平成23年4月頃からは係長(アシスタントディレクター)の地位にあり、主として、取引先から発注のあった商品を社用車に積み込み、ルートに従って順番に取引先に納品する「ルート営業」と呼ばれる業務に従事していた亡Bが、心停止(心臓性突然死)により死亡したことについて、亡Bの妻であるX(原告、被控訴人)が、亡Bの死亡は過重な労働に従事したことが原因であって業務に起因するものであると主張して、処分行政庁に対し、労災保険法による遺族補償給付等の請求を行ったところ、これらを支給しない旨の本件各不支給処分を受けたことから、その取消しを求めた事案である。
(2) 宮崎地裁は、亡Bの死亡は業務に起因するものと判断して、本件各不支給処分を取り消す旨の原判決をしたところ、これを不服としてYが本件控訴を提起した
参照法条 労働者災害補償保険法7条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2017年8月23日
裁判所名 福岡高裁宮崎支部
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)3号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1172号43頁
労働経済判例速報2326号26頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 本件発症を、亡Bが元々有していた基礎疾患が自然の経過により悪化した結果として説明することは困難であるといわざるを得ない。むしろ、亡Bは、本件発症前6か月間の労働により相応の疲労の蓄積があったことを背景に、発症直前9日間から発症当日にかけて、本件クレームの対応及び県外出張による強度の精神的、身体的負荷が短期間に集中したことにより、亡Bの血管病変等をその自然の経過を超えて急激に悪化させたことによって本件発症に至ったと認めるのが相当である。そうすると本件発症は、亡Bの従事していた業務の危険性が現実化したものと評価することができ、本件発症と亡Bの業務との間に相当因果関係を認めることができる。よって、本件発症は、労災保険法7条1項1号にいう業務上の疾病に当たり、これと判断を異にする本件各不支給処分はいずれも取り消されるべきである。