ID番号 | : | 09191 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件(10804号)、損害賠償等反訴請求事件(20771号) |
いわゆる事件名 | : | 建通エンジニアリング業務委託契約者ほか事件 |
争点 | : | 準委任契約者による競業行為の違法性が問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | 本訴において、建築工事等の設計、監理、施工並びにその請負、一般及び特定労働者派遣事業、有料職業紹介事業等を目的とする株式会社であるX(原告)が、Xとの間で労働契約又は準委任契約を締結していたY1(被告)が、Xと競業関係にあるY2社(被告)の副社長として競業行為等を行ったとして、主位的に、Y1に対しては労働契約上の職務専念義務違反若しくは競業避止義務違反(以下、一括して「労働契約上の職務専念義務等違反」という。)又は準委任契約上の善管注意義務違反、忠実義務違反、競業避止義務違反、報告義務違反若しくは告知義務違反(以下、一括して「準委任契約上の競業避止義務等違反」という。)あるいは不法行為に基づき、Y2に対しては共同不法行為に基づき、連帯して損害賠償の支払いを、予備的に、Y1に対しては準委任契約上の報告義務違反若しくは告知義務違反又は不法行為に基づき、Y2に対しては共同不法行為に基づき、連帯して損害賠償の支払い等を求め、反訴においては、Y1がXに対し、Xとの間の準委任契約に基づき、未払報酬金75万円の支払を求めた事案である。 |
参照法条 | : | |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/労働者/(2)委任・請負と労働契約 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(18)競業避止義務 |
裁判年月日 | : | 2017年8月31日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ワ)10804号/平成27年(ワ)20771号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(10804号)、棄却(20771号) |
出典 | : | 労働判例1179号71頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/労働者/(2)委任・請負と労働契約〕 Y1はXにおいて、主たる業務である建築工事の受注等における営業活動について、その相手先や営業方法を含め、具体的な業務指示を受けることはなく、業務日や業務時間を含めて勤怠管理を一切受けていなかったことが認められる使用者であるXの指揮監督下において労務を提供し、労務に対する代償を支払われていたとは認められず、XとY1との本件契約は労働契約ではなく、準委任契約としての性格を有する業務委託契約であったと認めるのが相当である。 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(18)競業避止義務〕 業務委託契約の受託者について、株式会社の取締役のように競業禁止等の規定(会社法356条)が設けられているわけではないから、競業禁止の特約がない場合に競業自体が一般的に禁止されるとは解されないものの、業務委託契約の内容は、労働契約に近い内容のものや請負契約に近い内容のものなど千差万別であり、委託業務の内容、報酬額、受託者の義務等の契約内容はもとより、契約締結の経緯、実際の業務遂行の際の担当業務の内容等の業務委託契約の履行状況を含む諸事情を総合考慮の上、競業行為等の際に委託者の持つ資源等の活用の程度、競業行為の内容、相当性を個別具体的に検討して、これによって得るべき自己又は第三者の利益の内容程度やこれによって生じる委託者の不利益の内容程度等によっては、委託者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ることのないよう求める善管注意義務の一内容として、競業禁止義務や競業に関する報告義務を負う場合があり、これに違反した場合には債務不履行が成立し得るというべきである。 Y1の準委任契約に基づく競業避止義務等違反又は損害の発生が認められないので、XのY1に対する主位的請求及び予備的請求1は、理由がない。 Y1は、本件契約を平成26年4月以降も継続するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報をXに報告しなかったことについて報告義務違反として債務不履行責任を負い、Xに対して300万円の損害賠償債務を負うというべきである。 |