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ID番号 09194
事件名 未払賃金請求事件
いわゆる事件名 サンフリード事件
争点 時間外労働の割増賃金請求および長時間労働についての不法行為の成否が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 米穀の売買・搗精・加工、麦、雑穀、砂糖、粉、油脂類、その他飲食料品並びに日用雑貨の売買、麺の製造及び販売等を行うY(被告)に期間の定めのない社員として雇用されていたX(原告)ら5名が、Yに対し、雇用契約に基づき、労働基準法(以下「労基法」という。)に従った割増賃金の支払、および長期間かつ長時間の時間外労働を命じられたことなどについて、不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた事案である。
参照法条 労基法32条の4第1項
労基法41条
労基法114条
体系項目 労働時間(民事)/変形労働時間
賃金(民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当
労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者
裁判年月日 2017年9月14日
裁判所名 長崎地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ワ)21号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1173号51頁
審級関係 控訴後和解
評釈論文
判決理由 〔労働時間(民事)/変形労働時間〕
 長崎労働基準監督署長に対し、それぞれ「一年単位の変形労働時間制に関する協定届」を提出している。しかしながら、前記認定事実によれば、上記各協定届の作成に際し、選出目的を明らかにした投票、挙手等の方法による手続は行われておらず、上記各協定届には、労基則6条の2第1項所定の手続によって選出された者ではない者が、被告の「労働者の過半数を代表する者」として署名押印しているから、同協定届の存在から、被告が主張する上記各協定届に係る労基法32条の4第1項所定の協定が成立したとの事実を推認することはできない。
〔賃金(民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 Xら5名が支給を受けていた物価手当、外勤手当、運転手当及び職務手当は、いずれも実質的に時間外労働に対する手当として支給されたものということはできず、割増賃金の基礎となる賃金から除外されることなく、全て同賃金に算入されるというべきである。
〔労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕
 X1は課長就任後も、それより前と同様、出勤時及び退勤時にタイムカードを打刻し、商品の納品や配送、商品やイベントの企画などの業務を行っていたものであり、Yの経営に関わる重要事項に関与していた形跡はうかがわれない。X1の基本給は17万8000円で、入社後8年以上が経過していたことを考慮すれば、決して高額ではない上、その金額は課長就任前後で変化していない。X1は、職務手当の支給を受けるようになったが、前記前提事実及び認定事実によれば、同時に、固定残業手当名目の金員も受領しており、同事業部に所属していたX4も、同月分からX1と同額の職務手当の支給を受けていたが、同支給と共に割増賃金の支給を受けたことがあった。これらの事情に照らせば、X1が課長になり職務手当の支給を受けていたことから、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であるとの事実を推認することはできず、他にX1が管理監督者であることを認めるに足りる証拠はない。 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(16)安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 X4以外の者についてYの不法行為は認められないが、X4は平成25年夏頃、頭髪が半部ほど抜けて、医師から過労とストレスが原因であると言われ、その後、通院して治療を受けていたところ、その稼働状況が、平成24年4月9日から同年6月2日まで、毎日稼働し、同年3月16日から平成25年4月15日までの1年1か月の間、100時間を超える時間外労働をし続けるものであったことを併せ考慮すれば、上記通院は、上記1年以上に及ぶ長時間労働によるものであると認められ、YはX4に作業に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してその心身の健康をその損なう状態にあることを認識しながら、これを認容して、X4に対して上記長時間労働を行わせ続けていたものといえ、法人活動全体としての不法行為を構成し、Yは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと解するのが相当である。