ID番号 | : | 09197 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本郵便(時給制契約社員ら)事件 |
争点 | : | 時給制契約社員と正社員との間の労働条件の不合理な格差の有無が問われた事案(労働者一部敗訴) |
事案概要 | : | Y(被告)との間で期間の定めのある労働契約を締結したX(原告)らが、期間の定めのない労働契約を締結しているYの正社員と同一内容の業務に従事していながら、手当等の労働条件において正社員と差異があることが労働契約法(以下「労契法」という。)20条に違反するとして、Y社員給与規程及びY社員就業規則の各規定がXらにも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、上記差異が同条の施行前においても公序良俗に反すると主張して、正社員の諸手当との差額の支払を求めた事案である。 |
参照法条 | : | 民事訴訟法248条 民法90条 民法709条 労働契約法20条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/男女同一賃金、同一労働同一賃金 労基法の基本原則(民事)/均等待遇 |
裁判年月日 | : | 2017年9月14日 |
裁判所名 | : | 東京地裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成26年(ワ)11271号 |
裁判結果 | : | 主位的請求棄却、予備的請求一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2368号32頁 判例タイムズ1449号174頁 労働判例1164号5頁 労働経済判例速報2323号3頁 労働法律旬報1901号54頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 小西康之・ジュリスト1512号4~5頁 矢野昌浩・法学セミナー62巻12号115頁2017年12月 沼田雅之・労働法律旬報1901号6~19頁 棗一郎・労働法律旬報1901号20~30頁 野川忍・季刊労働法259号107~120頁 岸聖太郎・ビジネス法務18巻2号37~41頁 水口洋介・季刊労働者の権利324号133~139頁 富永晃一(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1516号110~113頁 高仲幸雄(判例実務研究会)・労働法令通信2476号28~31頁 毛塚勝利・労働判例1172号5~25頁 島田裕子(労働判例研究会)・法律時報90巻5号148~151頁 野田進(社会法判例研究会)・法政研究〔九州大学〕84巻4号125~142頁 森博行・労働法律旬報1912号6~10頁 野川忍・法律時報90巻7号52~62頁 岡村優希・日本労働法学会誌131号156~168頁 中村新・LIBRA18巻9号40~41頁 矢野昌浩・速報判例解説〔22〕(法学セミナー増刊)261~264頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/男女同一賃金、同一労働同一賃金〕 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇〕 労契法20条は、同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく、同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合があることを前提としており、有期契約労働者と無期契約労働者との間で一定の賃金制度上の違いがあることも許容するものと解される。個別の労働条件ごとに相違の不合理性を判断する場合においても、個々の事案におけるそのような事情を「その他の事情」として考慮した上で、人事制度や賃金体系を踏まえて判断することになるのであるから、Yの個別の労働条件ごとに不合理性を論じること自体が不適切であるという主張は、採用することができない。 Xら契約社員と労働条件を比較すべき正社員は、担当業務や異動等の範囲が限定されている点で類似する新一般職とするのが相当である。 正社員のうち新一般職と時給制契約社員との間には、いずれも昇任昇格が予定されていない点など共通点もあり、旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間ほどの大きな相違は認められないものの、時給制契約社員の中には、正社員と異なり、勤務時間の長さが限定されている者が存在し、これらの時給制契約社員は、勤務時間の長さを限定して募集がされ、採用時に当該勤務時間での勤務について合意しており、その他、特定の勤務時間以外の時間帯には勤務をさせない旨や、特定の曜日には勤務させない旨をあらかじめ合意している者も存在するなど、勤務時間等の指定について大きな相違があるほか、人事評価の評価項目等に照らしても、期待されている業務の内容や果たすべき役割に違いがあることが前提とされており、両者の間には一定の相違があることが認められる。 正社員のうち旧一般職及び地域基幹職と時給制契約社員との間には、職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があり、新一般職と時給制契約社員との間にも、一定の相違があると認められる。 新一般職と時給制契約社員との間の手当支給の相違について、外務業務手当、年末年始勤務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当、住居手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内務業務精通手当については差異を設けることについて、不合理なものであるということはできないが、夏期冬期休暇、病気休暇について、差異を設けることに合理的理由があるとはいえない。 |