全 情 報

ID番号 09227
事件名 復職義務不存在確認等請求事件
いわゆる事件名 相鉄ホールディングス事件
争点 在籍出向解除によるバス運転士の多職種への配転の有効性が争われた事案(労働者敗訴)
事案概要 ホールディングス会社である被告Yの従業員であり、バス会社に在籍出向していたXら58名が、順次在籍出向を解除され、バス運転業務を外されて(本件復職命令)、清掃業務等への従事を命じられたことに関し、本件復職命令は労働協約、個別労働契約に違反し、権利濫用にあたり、無効であると主張して、Yに対して、バス運転業務以外の業務に従事する義務がない労働契約上の地位確認、精神的苦痛について不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。
参照法条 労働契約法14条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣/復帰命令
配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用
裁判年月日 2018年4月19日
裁判所名 横浜地判
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ワ)2537号/平成28年(ワ)5078号/平成29年(ワ)4041号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1185号5頁
審級関係 控訴
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣/復帰命令〕
〔配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用〕
 「Yは、人事権の行使としてXらの出向を解除して復職を命じることができるが、本件復職命令は、Xらの職務内容を変更するものであるので、業務上の必要性・合理性が存在しない場合又は業務上の必要性・合理性が存在する場合であっても、他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである等、特段の事情の存する場合、本件復職命令は権利の濫用になるものというべきである」。
 本件復職命令は、業務上の必要性・合理性があったと認められる。Yは、本件復職命令によって復職したXらの一部を、再出向先が決まるまでの一時的な期間、旧武道場又はオベリスクに出勤させ、かつ、空き時間に清掃業務に従事させていたにすぎず、追い出し部屋的処遇をしたとはいえず、人員配置、労働力活用、生産性の観点から、不合理・不適切であるとは認められない。
 Xらは、本件復職命令により、長年携わってきたバス運転士の業務から離れることになるところ、職業は、労働者の生活の大部分を占め、自己実現の手段であることからすれば、Xらの不利益は、主観的には相当程度大きいものと認められるが、XらのYとの労働契約において、職種をバス運転士とする旨の職種限定合意は認められず、契約上、異業種への配転が予定されていたのであるから、バスの運転士から離れたくないというXらの主観的な利益は、限定的にしか保護されないといわざるを得ない。