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ID番号 09237
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 長澤運輸事件
争点 定年再雇用後の有期社員と無期社員との労働条件相違の不合理性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) Y(被告、控訴人、被上告人)を定年退職した後に、期間の定めのある労働契約(有期労働契約」)をYと締結して就労しているX(原告、被控訴人、上告人)らが、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)をYと締結している従業員との間に、労働契約法20条に違反する労働条件の相違があると主張して、主位的に、無期労働契約従業員に関する就業規則等が適用される労働契約上の地位確認、労働契約に基づき、上記就業規則等により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、予備的に、不法行為に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
(2)東京地裁はXらの請求を認容し、Yが控訴。東京高裁は、60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており、定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要があること等を考慮すると、定年退職後の継続雇用における賃金を定年退職時より引き下げること自体が不合理であるとはいえず、Xらの賃金が定年退職前より2割前後減額されたことをもって直ちに不合理であるとはいえないとしてXらの請求を棄却した。Xらが上告。
参照法条 民法709条
労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
裁判年月日 2018年6月1日
裁判所名 最高裁第二小法廷
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(受)442号
裁判結果 一部破棄自判、一部破棄差戻し、一部棄却
出典 最高裁判所民事判例集72巻2号202頁
裁判所時報1701号5頁
判例時報2389号107頁
判例タイムズ1453号47頁
金融・商事判例1552号8頁
労働判例1179号34頁
労働経済判例速報2346号10頁
労働法律旬報1918号62頁
審級関係
評釈論文 大内伸哉・NBL1126号4~12頁2018年7月15日
花垣在彦・季刊労働者の権利326号9~15頁2018年7月
小西康之・ジュリスト1521号4~5頁2018年7月
野川忍・法律時報90巻9号4~6頁2018年8月
富永晃一・論究ジュリスト26号140~151頁2018年8月
平越格・労働経済判例速報2346号2頁2018年7月10日
水町勇一郎・労働判例1179号5~19頁2018年7月15日
河津博史・銀行法務2162巻9号70頁2018年8月
橘大樹・ビジネス法務18巻9号22~26頁2018年9月
宮里邦雄・労働法律旬報1918号10~15頁2018年8月25日
深谷信夫・労働法律旬報1918号25~37頁2018年8月25日
小谷野毅・労働法律旬報1918号38~42頁2018年8月25日
島田裕子・ジュリスト1523号74~79頁2018年9月
中川恒彦・労働法令通信2495号21~27頁2018年8月18日
杉原知佳・経営法曹198号7~18頁2018年9月
小島豊一郎、山畑茂之、木野綾子、渡邊徹、和田一郎、木下潮音、松下守男、沢崎敦一、豊浦伸隆・経営法曹198号22~42頁2018年9月
野田広大・LIBRA18巻10号38~39頁2018年10月
野川忍・季刊労働法262号2~3頁2018年9月
本久洋一・季刊労働法262号238~241頁2018年9月
光前幸一・LIBRA18巻11号3~8頁
村田一広、中島崇・ジュリスト1525号119~124頁
村田一広、中島崇・法律のひろば71巻10号48~54頁
緒方桂子・季刊労働法263号2~12頁
中村昭太郎・労働法令通信2499号29~32頁
山畑茂之・労働経済判例速報2366号25~35頁
山田省三・労働判例1193号89~97頁
島田裕子・民商法雑誌155巻2号108~136頁
永石一郎・法の支配192巻2号61~78頁
花垣存彦・法学セミナー64巻3号23~27頁
鴨田哲郎・実務に効く 労働判例精選<第2版>(ジュリスト増刊)167~175頁
山下眞弘・金融・商事判例1576号2~7頁
鈴木雄貴・白門〔中央大学〕71号秋68~74頁
水島郁子・判例評論730号(判例時報2421)165~171頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
 「労働契約法20条は、有期労働契約を締結している労働者(以下「有期契約労働者」という。)の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される」。
 「労働者の賃金に関する労働条件は、労働者の職務内容及び変更範囲により一義的に定まるものではなく、使用者は、雇用及び人事に関する経営判断の観点から、労働者の職務内容及び変更範囲にとどまらない様々な事情を考慮して、労働者の賃金に関する労働条件を検討するものということができる。また、労働者の賃金に関する労働条件の在り方については、基本的には、団体交渉等による労使自治に委ねられるべき部分が大きいということもできる。そして、労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断する際に考慮する事情として、「その他の事情」を挙げているところ、その内容を職務内容及び変更範囲に関連する事情に限定すべき理由は見当たらない」。
 「Xらに対し、精勤手当を計算の基礎に含めて計算した時間外手当を支給しないことは、労働契約法20条に違反するものであり」、「Yは、上記取扱いによりXらが被った損害について、不法行為に基づく損害賠償責任を負う」。「Xらの主位的請求並びに精勤手当及び超勤手当(時間外手当)を除く本件各賃金項目に係る予備的請求をいずれも棄却した原審の判断は、結論において是認することができ」る。