全 情 報

ID番号 09239
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 エボニック・ジャパン事件
争点 定年後再雇用社員の雇止めの有効性などが問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 有機化学工業製品、無機化学工業製品、医薬品、農薬、農業用肥料、触媒、特に貴金属を含む触媒及びこれらに関連する製品の輸出入並びに製造及び売買等を目的とする被告Yの元正社員である原告Xが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約(本件再雇用契約)により再雇用された後、「定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定」(本件労使協定)所定の再雇用制度の対象となる者の基準(本件再雇用基準)を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったこと(本件雇止め)について、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、労働契約上の権利を有する地位確認、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求める事案である。
参照法条 労働契約法19条
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
裁判年月日 2018年6月12日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ワ)23169号
裁判結果 一部却下、一部認容、一部棄却
出典 労働判例1205号65頁
労働経済判例速報2362号20頁
審級関係 控訴(後、和解)
評釈論文
判決理由 〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
 「本件労使協定に基づく再雇用制度は、高年法上の高年齢者雇用確保措置の1つである継続雇用制度として設けられたものであることを踏まえると、本件人事考課基準が、過去3年間のいずれの年においても、達成度評価の評価値(点数)が全従業員の平均点以上とか、3点以上といった趣旨であるとは解しがたい。むしろ、「普通の水準」は、大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨と解すべきであるし、「過去3年間の人事考課結果が普通の水準以上であること」というのは、過去3年間について、3年連続で「普通の水準」以上であることを要求するものではなく、過去3年間を通じて評価した場合に「普通の水準」以上であれば足りるという趣旨と理解するのが合理的である。」
 Xは「同契約が65歳まで継続すると期待することについて、就業規則16条2項及び本件労使協定の趣旨に基づく合理的な理由があるものと認められ、CGMも、本件労使協定1条について、本件再雇用基準に該当する限りにおいては必ず再雇用するという趣旨の規定であると述べている(人証略)。そして、本件再雇用契約の終期である平成28年3月31日の時点において、Xは、本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものと認められる」。