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ID番号 09241
事件名 懲戒処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 帝産湖南交通事件
争点 新聞社への誤った情報提供行為を理由とする懲戒処分の適法性が問われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 当時Y(被告、被控訴人)の正社員であり、B労働組合(本件組合)の執行委員長であったX(原告、控訴人)が、C党機関紙「しんぶん赤旗」(本件新聞)に掲載された「パート待遇改善で安全守る」と題する新聞記事(本件記事)に関し、新聞記者に対し誤った情報を提供して報道させ、Yの信用を著しく毀損したことが就業規則の懲戒事由に該当するとしてYのなした出勤停止10日間及び始末書提出の懲戒処分(本件懲戒処分)は無効であると主張し、その確認を求めるとともに、本件懲戒処分がなければ得られた賃金および遅延損害金の支払を求め、さらに、Xは、Yが無効である本件懲戒処分に基づき控訴人を合計9日間就労させなかったことにより精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)大津地裁は、上記記事はYの信用を毀損し、かつ、その一部に真実でない部分があるから、Xには懲戒事由に該当する事実があり、本件懲戒処分に相当性があり、手続違反や不当労働行為該当性は認められないから、本件懲戒処分は有効であるとして、Xの請求をすべて棄却したところ、Xが控訴した。
参照法条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(6) 信用失墜
懲戒・懲戒解雇/懲戒手続
裁判年月日 2018年7月2日
裁判所名 大阪地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ネ)1453号
裁判結果 原判決変更自判
出典 労働判例1194号59頁
審級関係 上告、上告受理申立て(後、棄却、不受理)
評釈論文 鎌田幸夫・季刊労働者の権利328号98~102頁
河野奈月(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1528号115~118頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/(6) 信用失墜〕
 「一般読者の読み方を前提とした場合、その掲載及びそれに係る情報提供行為は、公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的でなされたものであって、適示された事実が真実であることが証明されたということができるから、それに係る情報提供行為には違法性がなく、不法行為は成立しないというべきであるから、記事〈1〉及び〈2〉に係るXの情報提供行為が、Y主張の懲戒事由に該当するということはできない」。
〔懲戒・懲戒解雇/懲戒手続〕
 Yは本件組合に対し賞罰委員会を開催することを前提に、労働協約に基づき同委員会を構成する組合側の委員を通知するよう求めていたが、本件組合がこれを拒否し同委員会が開催されたなかったが、本件組合の拒否に合理的な理由がないことなどから、「Yが、結果として、賞罰委員会及び労使協議会での協議を経ずに本件懲戒処分をした手続自体に違法性があるということはできない」。