ID番号 | : | 09261 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本郵便(時給制契約社員ら)事件 |
争点 | : | 日本郵便の時給制契約社員と正社員間との諸手当の相違の不合理性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) Y(被告、控訴人兼被控訴人)との間で期間の定めのある労働契約を締結したX(原告、被控訴人兼控訴人)らが、期間の定めのない労働契約を締結しているYの正社員と同一内容の業務に従事していながら、手当等の労働条件において正社員と差異があることが労働契約法20条に違反するとして、〈1〉Xらが、Y社員給与規程及びY社員就業規則の各規定が適用される労働契約上の地位にあることの確認、〈2〉上記差異が同条の施行前においても公序良俗に反すると主張して、同条の施行前について、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払、〈3〉同条の施行後について、ア主位的に労働契約に基づき、諸手当の差額)及びこれに対する遅延損害金の支払、イ予備的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、アと同額の損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 (2)東京地裁は主位的請求を棄却し、予備的請求を一部認容、その余を棄却したため、Yが控訴し、Xも〈1〉、〈3〉の主位的認容を求めて控訴した。 |
参照法条 | : | 民法90条 民法709条 労働契約法20条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2018年12月13日 |
裁判所名 | : | 東京高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ネ)4474号 |
裁判結果 | : | 原判決変更 |
出典 | : | 労働判例1198号45頁 労働経済判例速報2369号3頁 |
審級関係 | : | 上告、上告受理申立て |
評釈論文 | : | 小西康之・ジュリスト1529号4~5頁 延増拓郎・労働経済判例速報2369号2頁 水口洋介・季刊労働者の権利330号76~81頁 沼田雅之・労働法律旬報1938号6~16頁 水口洋介・労働法律旬報1938号17~23頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕 住居手当に関して、旧人事制度では、Yの正社員のうちの旧一般職は、転居を伴う可能性のある配置転換等が予定されていたが、時給制契約社員は転居を伴う配置転換等は予定されていないから、この相違は労契法20条にいう不合理と認められるものに当らない。しかし、新人事制度では、新一般職は転居を伴う配置転換等は予定されないため、時給制契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものであるから、労契法20条にいう不合理と認められるものに当たる。 夏期冬期休暇の趣旨は、内容の違いはあれ、一般的に広く採用されている制度をYにおいても採用したものと解され、Yの従業員のうち正社員に対して上記の夏期冬期休暇を付与する一方で、時給制契約社員に対してこれを付与しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものであるから、労契法20条にいう不合理と認められる。 病気休暇について、正社員に対して日数の制限はなく、短時間勤務の者も含まれる時給制契約社員に対し病気休暇を1年度において10日の範囲内で認めている労働条件の相違は、その日数の点においては、不合理であると評価することができるものとはいえない。しかし、正社員に対し私傷病の場合は有給(一定期間を超える期間については、基本給の月額及び調整手当を半減して支給)とし、時給制契約社員に対し私傷病の場合も無給としている労働条件の相違は、不合理であると評価することができる。 労契法20条の公布から7か月以上の期間があり、同条の施行前にユニオンから時給制契約社員等について諸手当について処遇改善を求められていた経緯に照らせば、Yにおいて、その評価の基礎となる事実関係を認識していたことは明らかであるから、これを認識することができたというべきである。したがって、Yには、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇及び病気休暇に係る正社員と時給制契約社員との間の不合理な労働条件の相違について過失が認められる。 |