ID番号 | : | 09267 |
事件名 | : | 損害賠償等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人産業医科大学事件 |
争点 | : | 医科大学の臨時職員と正規職員との賃金差額の不合理性が争われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) 学校法人Y(被告、被控訴人)の臨時職員であるX(原告、控訴人)が、使用者であるYに対し、両者間の労働契約(本件労働契約)に係る賃金の定めが有期労働契約であることによる不合理な労働条件であって、無期労働契約を締結している正規職員との間で著しい賃金格差を生じており、労働契約法20条及び公序良俗に違反するとして、不法行為に基づき、損害金824万0750円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 (2) 福岡地裁小倉支部は、Xの請求を棄却したところ、Xが控訴をした。 |
参照法条 | : | 民法709条 労働契約法20条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2018年11月29日 |
裁判所名 | : | 福岡高裁 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ネ)886号 |
裁判結果 | : | 原判決変更 |
出典 | : | 判例時報2417号91頁 判例タイムズ1463号86頁 労働判例1198号63頁 労働経済判例速報2370号3頁 |
審級関係 | : | 確定 |
評釈論文 | : | 沼田雅之・労働法律旬報1938号6~16頁2019年6月25日 中村昭太郎・労働法令通信2528号26~29頁2019年8月8日 河津博史・銀行法務2163巻14号69頁2019年12月 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕 「正規職員である対照職員と臨時職員であるXとの間では、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)に違いがあるということができ、さらに、両者は、その可能性だけでなく、実際上も職務の内容及び配置の各変更の範囲において相違があるということができる」。 「1か月ないし1年の短期という条件で、しかも大学病院開院当時の人員不足を補う目的のために4年間に限り臨時職員として採用された有期契約労働者が、30年以上もの長期にわたり雇い止めもなく雇用されるという、その採用当時に予定していなかった雇用状態が生じたという事情は、当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において、労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たるというべきである」。 「臨時職員と対照職員との比較対象期間及びその直近の職務の内容並びに職務の内容及び配置の各変更の範囲に違いがあり、Xが大学病院内での同一の科での継続勤務を希望したといった事情を踏まえても、30年以上の長期にわたり雇用を続け、業務に対する習熟度を上げたXに対し、臨時職員であるとして人事院勧告に従った賃金の引き上げのみであって、Xと学歴が同じ短大卒の正規職員が管理業務に携わるないし携わることができる地位である主任に昇格する前の賃金水準すら満たさず、現在では、同じ頃採用された正規職員との基本給の額に約2倍の格差が生じているという労働条件の相違は、同学歴の正規職員の主任昇格前の賃金水準を下回る3万円の限度において不合理であると評価することができるものであり、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である」。 「Xは、平成25年4月1日から平成27年7月30日まで、正規職員であれば支給を受けることができた月額賃金の差額各3万円及び賞与…に相当する損害(合計113万4000円)を被ったということができる」。 |