ID番号 | : | 09270 |
事件名 | : | 未払賃金等、地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 平尾事件 |
争点 | : | 労働協約の効力と賃金請求権 |
事案概要 | : | (1) 貨物自動車運送等を業とする被上告人(平尾株式会社)の営業所で生コン運送自動車の運転手として勤務してきた上告人が、被上告人と上告人所属の労働組合との間で締結された給与・賞与を平成25年8月から12月間20%カットすること及び当該カット分賃金のすべてを労働債権として確認することを内容とする第1労働協約の失効及びその後に締結された同様の内容の第2労働協約(給与・賞与を平成26年8月から12月間20%カット等)の無効を主張し、カットされた給与の支払等を求める事案である。なお、同内容の第3労働協約(給与・賞与を平成27年8月から12月間20%カット等)も締結されている。 (2) 原判決は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告したものである。最高裁判決は、カットされた賃金(成25年8月から同26年11月までの間)の支払いを命じた。 |
参照法条 | : | 労働組合法14条 労働組合法16条 労働基準法23条 労働基準法24条 |
体系項目 | : | 賃金 (民事)/賃金請求権の発生/(25) 協約の成立と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 平成31年4月25日 |
裁判所名 | : | 最一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(受)1889号 |
裁判結果 | : | 一部破棄自判、一部破棄差戻し、一部棄却 |
出典 | : | 最高裁判所裁判集民事261号233頁 裁判所時報1723号1頁 判例時報2424号126頁 判例タイムズ1461号17頁 労働判例1208号5頁 労働経済判例速報2385号3頁 裁判所ウェブサイト掲載判例 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 河津博史・銀行法務2163巻7号68頁2019年6月 水町勇一郎・ジュリスト1535号4~5頁2019年8月 桑村裕美子・論究ジュリスト30号178~186頁2019年8月 野田広大・LIBRA19巻9号44~45頁2019年9月 三笘裕/監修/坂口将馬・ビジネス法務20巻1号55頁2020年1月 岩出誠(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1540号99~102頁2020年1月 勝亦啓文(労働判例研究会)・法律時報92巻9号146~149頁2020年8月 冨岡俊介・経営法曹205号26~32頁2020年9月 |
判決理由 | : | 〔賃金 (民事)/賃金請求権の発生/(25) 協約の成立と賃金請求権〕 (1)本件合意は被上告人と上告人が所属していた労働組合との間でされたものであるから、本件合意により上告人の賃金債権が放棄されたというためには、本件合意の効果が上告人に帰属することを基礎付ける事情を要するところ、本件においては、この点について何ら主張立証はなく、当該労組が上告人を代理して具体的に発生した賃金債権を放棄する旨の本件合意をしたなど、本件合意の効果が上告人に帰属することを基礎付ける事情はうかがわれない。そうすると、本件合意によって上告人の本件各未払賃金に係る債権が放棄されたものということはできない。 (2)本件各未払賃金のうち、第1労働協約により支払が猶予されたものについては第2労働協約及び第3労働協約が締結されたことにより、第2労働協約により支払が猶予されたものについては第3労働協約が締結されたことにより、その後も弁済期が到来しなかったものであり、これらについては、第3労働協約の対象とされた最後の支給分(平成28年7月支給分)の月例賃金の弁済期であった同月末日の経過後、支払が猶予された賃金のその後の取扱いについて、協議をするのに通常必要な期間を超えて協議が行われなかったとき、又はその期間内に協議が開始されても合理的期間内に合意に至らなかったときには、弁済期が到来するものと解される。 (3)第1労働協約、第2労働協約及び第3労働協約は、被上告人の経営状態が悪化していたことから締結されたものであり、被上告人の経営を改善するために締結されたものというべきであるところ、平成28年12月31日に一審被告の生コンクリート運送業務を行う部門が閉鎖された以上、その経営を改善するために同部門に勤務していた従業員の賃金の支払を猶予する理由は失われたのであるから、遅くとも同日には第3労働協約が締結されたことにより弁済期が到来していなかった上告人の賃金についても弁済期が到来したというべきであり、原審口頭弁論終結時において、本件各未払賃金の元本221万2720円の弁済期が到来していたことは明らかである。 |