ID番号 | : | 09274 |
事件名 | : | 未払賃金等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 洛陽交運事件 |
争点 | : | 割増賃金の算定基礎 |
事案概要 | : | (1) 本件は、一審被告(洛陽交運株式会社)の従業員であるタクシー乗務員の一審原告が、一審被告に対し、①平成25年3月22日から平成28年2月19日までの時間外・深夜早朝勤務手当(以下「時間外等賃金」という。)等の支払、②労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求る事案である。 原判決は、割増賃金の計算方法が通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条所定の時間外・深夜割増賃金に当たる部分とを明確に判別することができない定めとなっていることなどから割増賃金の支払を命ずるとともに、法定で支払うべき割増賃金額が割増賃金部分として支払っていた賃金よりも多くなる場合に差額を支給する仕組みを実際にとっていなかったとして、未払の時間外割増賃金の一部について付加金の支払を命じた。 (2) これに対し、一審原告、一審被告が控訴したが、判決は、一審原告の控訴及び当審における請求の拡張に基づき、原判決を変更し、割増賃金の支払及びこれと同一額の付加金の支払を命じた。 |
参照法条 | : | 労働基準法37条 労働基準法114条 |
体系項目 | : | 賃金 (民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当 |
裁判年月日 | : | 平成31年4月11日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ネ)1966号 |
裁判結果 | : | 原判決変更 |
出典 | : | 労働判例1212号24頁 労働経済判例速報2384号3頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 上告、上告受理申立て(最三小決 令和1年9月24日 棄却、不受理) |
評釈論文 | : | 渡辺輝人・季刊労働者の権利331号130~135頁2019年7月 田中勇気・労働経済判例速報2384号2頁2019年8月20日 富永晃一・季刊労働法268号192~201頁2020年3月 |
判決理由 | : | 〔賃金 (民事)/割増賃金/(2) 割増賃金の算定基礎・各種手当〕 (1)一審被告が時間外・深夜労働手当として支給されたものであるとしているA期間(平成25年4月度から平成26年11月度まで)における「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」は、①「本給」が最低賃金額に抑えられ、「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」は、いずれも、時間外労働等の時間数とは無関係に、月間の総運送収入額を基に、定められた割合を乗ずるなどして算定されることとなっていること、②実際に法定計算による割増賃金額を算定した上で「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」の合計額との比較が行われることはなく、単に、各手当等の計算がされて給与明細書に記載され、その給与が支給されていたこと、③1審被告の求人情報において、月給が、固定給に歩合給を加えたものであるように示され、当該歩合給が時間外労働等に対する対価である旨は示されていないこと、④上記のような賃金算定方法の下において、1審被告の乗務員が、法定の労働時間内にどれだけ多額の運送収入を上げても最低賃金額程度の給与しか得られないものと理解するとは考え難いことからすると、「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」は、乗務員が時間外労働等をしてそれらの支給を受けた場合に、割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。B期間(平成26年12月度以降)における「基準外1」及び「基準外2」は、A期間における「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」とその性質は異ならないというべきである。したがって、いずれも通常の労働時間の賃金として、割増賃金の基礎となる賃金に当たるというべきである。 (2)本件に現れた一切の事情を考慮し、法定時間外労働及び深夜労働に対する未払割増賃金額と同一額の付加金の支払を命ずるのが相当である。 |