ID番号 | : | 09277 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 松原興産事件 |
争点 | : | パワハラによる損害賠償と個体側の脆弱性による過失相殺 |
事案概要 | : | (1) トータルアミューズメント施設(パチンコ、ボーリング、ゲームセンター)の経営を目的とする被告(株式会社松原興産)の従業員であった原告が、上司であった訴外A班長から継続的にパワーハラスメント(以下「パワハラ」という。)を受けて、うつ病にり患し、退職を余儀なくされたと主張して、被告に対し、使用者責任(民法715条)又は債務不履行(安全配慮義務違反・民法415条)に基づき、損害金等の支払を求めた事案である。 (2)判決は、パワハラ行為と原告のうつ病との因果関係を認めるとともに、原告の個体側の脆弱性を斟酌し民法722条2項の過失相殺を適用して損害金572万3434円を認容した。 |
参照法条 | : | 民法715条 民法722条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 平成30年5月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成28年(ワ)1440号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1210号43頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 (1)原告のうつ病発症前6か月間を検討するに、A班長は、原告の勤務態度を問題視して降格的配置をしたり、叱責を繰り返したばかりか、とりわけ、同年7月15日、本件店舗の経験の長い原告がA班長と対立した際には、「お前もほんまにいらんから帰れ。迷惑なんじゃ。」と発言して、パチンコ台の鍵を取り上げようとし、同年9月6日には、「お前をやめさすために俺はやっとるんや。店もお前を必要としてないんじゃ。」と発言して、スピーカー線破損の始末書作成を強要し、同年10月2日には些細な指示命令違反の有無を捉えて、「嘘つけ。お前いうこと聞かんし。そんなんやったらいらんから帰れや。」と発言した上、反抗に対する懲罰として、原告を約1時間にわたって、カウンター横に立たせたこと(以下「本件パワハラ行為」という。)は、業務指導の域を超えた原告に対する嫌がらせ、いじめに該当し、その発言は、原告の人格を否定するような内容であって、パワハラに該当する。 そして、D店長は、上記のようなA班長の原告に対する嫌がらせを把握できる状況にありながら、A班長に対して有効な指導をすることはなかった。 本件パワハラ行為は、被告の本件店舗従業員であるA班長が、その業務を行う中で、その部下である原告に対して、指示・指導等として、行われたものであるから、被告の事業の執行についてされたものであり、被告は、使用者責任を負う。 (2)本件パワハラとうつ病の発症との間には相当因果関係が認められる。しかしながら、本件パワハラ行為による心理的負荷は極めて強度とまではいえないこと、更には、原告のうつ病は既に5年半に及ぶも改善の目途が立っていないことが認められ、これらの事実によれば、個体側の脆弱性がうつ病発症及び長期化の素因となっているものというべきであって、それは、損害賠償額の認定に当たっては衡平の観点から斟酌すべきであって、民法722条2項の類推適用により、原告の損害からは、25%の減額を行うのが相当である。 |