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ID番号 09281
事件名 割増賃金等請求事件
いわゆる事件名 企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件
争点 労働者性
事案概要 (1) 本件は、一般貨物自動車運送事業等を目的として設立された企業組合である被告(企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山)のもとで、荷物配達業務に従事していた原告が、被告に対し、自らは労働者であると主張して、労働基準法37条1項に基づき未払割増賃金等の支払を求める事案である。なお、原告は、出資金5万円を払い込んで、被告の「メンバー」と呼称される地位(組合員)にある。
(2) 判決は、原告は労基法9条の「労働者」に該当するとは認められないとして、原告の訴えを棄却した。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法37条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/労働者/(16) 共同経営者
賃金(民事)/割増賃金/(4) 支払い義務
裁判年月日 平成30年9月25日
裁判所名 東京地立川支
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)2094号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1207号45頁
審級関係 控訴
評釈論文 橋本陽子・ジュリスト1528号4~5頁2019年2月 吉岡剛・LIBRA19巻8号40~41頁2019年8月
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/労働者/(16) 共同経営者〕
(1)ワーカーズ・コレクティブは、生活協同組合の活動から派生し、「ひとり一人が主体的に出資し、運営し、働き、共同で事業をすることで地域が豊かになること」を組織の理念とし、中小企業協同組合法等に基づいて、個人事業者や勤労者などが4人以上集まり、それぞれの資本や労働力を拠出し合うことで活動を行う企業組合である。かかる理念等から、ワーカーズ・コレクティブは「雇用されない主体的な労働」に特徴があると言及されている。
被告はワーカーズ・コレクティブではあるが、その一事をもって当然に組合員の「労働者性」は否定されず、使用従属性の判断に加え、事業者性の有無等についても慎重に検討の上、その「労働者性」を判断する必要がある。
(2)原告らメンバーと被告との間の関係は、各メンバーが拠出金と労働力を出資して共同して配送業を経営するという組合構成員の色彩が濃いもので、被告から業務に関する一定の指示ないし時間的拘束があることや、器具や経費を被告が負担し、原告が雇用保険の対象になっていることなどを踏まえても、原告に「労働者性」を肯定することはできない。