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ID番号 09285
事件名 地位確認等仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
いわゆる事件名 地方独立行政法人岡山市立総合医療センター(抗告)事件
争点 職種限定合意の有無と配転命令
事案概要 (1) 医師(抗告人:原審債権者)が勤務する原審債務者岡山市立市民病院(以下「病院」という。相手方:原審債務者)から医師に対しなされた、消化器外科部長及び消化器疾患センター副センター長の解任、がん治療サポートセンター長への配置転換命令及び外科の一切の診療に関与することを禁止する診療禁止命令は、いずれも無効であるとして、医師が、がん治療サポートセンター長として勤務する雇用契約上の義務がないこと及び診療禁止命令に従う義務のないことの仮地位仮処分命令等を求める事案である。
(2)原審は医師の申し立てを却下したため、医師が即時抗告したところ、抗告審において原決定を変更し、職種限定合意に反するものとして無効とされた事例
参照法条 民法1条3項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 担務変更・勤務形態の変更
裁判年月日 平成31年1月10日
裁判所名 広島高岡山支
裁判形式 決定
事件番号 平成30年(ラ)41号
裁判結果 原決定変更
出典 判例時報2412号49頁
判例タイムズ1459号41頁
審級関係 確定
評釈論文 北村賢哲(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1542号134~13 7頁2020年3月
川端小織・経営法曹205号75~81頁2020年9月
判決理由 〔労働契約/労働契約の権利義務/担務変更・勤務形態の変更〕
(1)抗告人が有する認定医等の資格の更新には、いずれも更新前の一定期間に、指定された内容及び件数の手術に関与していること等が必要であり、外科医師として臨床に従事することが必須であるものと認められる。このように、抗告人の従事する外科医師という職業は、極めて専門的で高度の技能・技術・資格を要するものであること、長年にわたり特定の職務に従事することが必要で、熟練度や経験が労務遂行上重要な意味を持つものであることが明らかである。
 これらのことからすると、抗告人にとって、その技能・技術・資格を維持するために、外科医師としての臨床に従事することは必要不可欠であり、その意に反して外科医師としての臨床に従事しないという労務の形態は、およそ想定することができないものである。病院においても、抗告人の外科医師としての極めて専門的で高度の技能・技術・資格を踏まえて雇用したことは明らかであり、抗告人の意に反して外科医師として就労させない勤務の形態を予定して、抗告人を雇用したとは認められない。
(2)医師の同意なく、専門とする診療科での診療を禁止することは、医師としての高度の技能・技術・資格を一方的に奪うことになるから、当事者間において、病院にそのような配転命令を許容する内容の合意が成立しているとは認められない。
(3)以上のことからすると、本件では、黙示の職種限定合意の成立を認めるのが相当である。したがって、本件配転命令及びこれと一体をなす本件診療禁止命令は抗告人の外科での臨床への従事を禁止する内容のものであり、職種限定合意に反するものであるから、無効である。