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ID番号 09289
事件名 職務上義務不存在確認等請求控訴事件(30号)、同附帯控訴事件(66号)
いわゆる事件名 大阪市(ひげ禁止)事件
争点 身だしなみ基準と人事考課
事案概要 (1) 大阪市(一審被告)の交通局の職員である地下鉄運転士2名(一審原告)が、ひげを剃って業務に従事する旨の大阪市の職務命令又は指導に従わなかったために人事考課において低評価の査定を受けたことが、人格権としてのひげを生やす自由を侵害するものであって違法であるなどと主張して、①各賞与(勤勉手当)に係る本来支給されるべき適正な額との差額等、②国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として、それぞれ慰謝料及び弁護士費用の各支払を求める事案である。
(2) 原判決は、運転士らの①の賞与請求を棄却し、②については、それぞれ慰謝料20万円、弁護士費用2万円を認容した。このため、大阪市が控訴を提起し、運転士2名が附帯控訴を提起した事例。(控訴、附帯控訴とも棄却)
参照法条 国家賠償法1条1項
労働契約法
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/服務規律
裁判年月日 令和1年9月6日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成31年(行コ)30号...等
裁判結果 控訴、各附帯控訴棄却
出典 労働判例1214号29頁
労働経済判例速報2393号13頁
労働法律旬報1948号70頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔労働契約―労働契約上の権利義務―服務規律〕
(1) 本件身だしなみ基準は、職務上の命令として一切のひげを禁止し、又は、単にひげを生やしていることをもって人事上の不利益処分の対象としているものとまでは認められず、交通局の乗客サービスの理念を示し、職員の任意の協力を求める趣旨のものであること、一定の必要性及び合理性があることからすれば、本件身だしなみ基準の制定それ自体が違法であるとまではいえないものと判断する。
(2)本件身だしなみ基準を、職員の任意による協力以上の拘束力を持ち、人事考課において考慮事情とし得ると解するとすれば、それを合理的な制限であると認めることはできない。
(3)本件各人事考課は、被控訴人らがひげを生やしていることを主たる減点評価の事情として考慮したものであること、したがって、上記評価が人事考課における使用者としての裁量権を逸脱・濫用したものであって国賠法上違法であるものと判断する。当裁判所も、本件各人事考課及び上司の発言により、一審原告らが心理的圧迫や精神的苦痛を受けたこと、被控訴人らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料としてはそれぞれ20万円、弁護士費用としてはそれぞれ2万円が相当であるものと判断する。