ID番号 | : | 09304 |
事件名 | : | 未払い時間外賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日産自動車(管理監督者性)事件 |
争点 | : | 管理監督者の該当性 |
事案概要 | : | (1) 本件は、被告(日産自動車株式会社)において課長職を務めていたB(以下「B」という。)の相続人である妻(原告)が、被告に対し、〈1〉雇用契約による賃金請求権に基づき、平成26年9月から平成28年3月までの時間外労働分につき、労働基準法(以下「労基法」という。)上の割増率による割増賃金及び遅延損害金並びに〈2〉労基法114条に基づき、〈1〉と同額の付加金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 判決は、Bが管理監督者に該当するとはいえないとして、時間外労働に対する割増賃金等の支払請求を一部認容し、付加金の支払請求等については、被告がBを管理監督者に該当すると認識したことに相応の理由があるとして、これを棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法41条 労働基準法114条 |
体系項目 | : | 労働時間 (民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者 雑則 (民事)/4 附加金 |
裁判年月日 | : | 平成31年3月26日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ワ)1154号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1208号46頁 労働経済判例速報2381号3頁 D1-Law.com判例体系 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 飯田学史・季刊労働者の権利331号140~145頁2019年7月 岡崎教行・労働経済判例速報2381号2頁2019年7月20日 幡野利通(判例実務研究会)・労働法令通信2539号26~28頁2019年12月8日 中町誠(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1541号111~114頁2020年2月 坂本貴生・LIBRA20巻3号46~47頁2020年3月 吉永大樹・経営法曹205号105~117頁2020年9月 |
判決理由 | : | 〔労働時間 (民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕 (1)労基法上の管理監督者に該当するかどうかは、〈1〉当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているか、〈2〉自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか、〈3〉給与等に照らし管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇がなされているかという観点から判断すべきである。 (2) ダットサン・コーポレートプラン部に配属されていた当時のBについて、PDM会議における経営意思の形成に直接的な影響力を行使しているのは、PD(プログラムダイレクター)であっては、マネージャーは、PDの補佐にすぎないから、経営意思の形成に対する影響力は間接的であること、その他の職責及び権限を考慮しても、その当時のBが実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められない。 日本LCVマーケティング部に配属されていた当時のBについては、マーケティングマネージャーの役職にあり、マーケティングダイレクターの補佐にすぎず、経営意思の形成に対する影響力は間接的なものにとどまること、その他の職責及び権限を考慮しても、その当時のBが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職責及び権限を付与されていたとは認められない。 (3) Bは、ダットサン・コーポレートプラン部(NTC)及び日本LCVマーケティング部(本社)において、所定労働時間よりも遅く出勤し、早く退勤することも多かったが、遅刻、早退により賃金が控除されたことがない。Bの基準賃金は、月額86万6700円又は88万3400円で、年収は1234万3925円に達し、部下より244万0492円高かったのであるから、待遇としては、管理監督者にふさわしいものと認められる。 (4) 以上からすれば、Bは、自己の労働時間について裁量があり、管理監督者にふさわしい待遇がなされているものの、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているとは認められないところ、これらの諸事情を総合考慮すると、Bが、管理監督者に該当するとは認められない。 〔雑則 (民事)/4 附加金〕 (5) 被告が、割増賃金を支払わなかったのは、Bを管理監督者と認識していたためであるところ、Bは、結果として管理監督者とは認められないものの、間接的とはいえ経営意思の形成に影響する職責及び権限を有し、自己の労働時間について裁量も有しており、管理監督者にふさわしい待遇を受けていたことからすれば、被告がBを管理監督者に該当すると認識したことに、相応の理由があるというべきであり、被告がB及び原告に割増賃金を支払わなかったことについて、その態様が悪質であるということはできない。したがって、本件において、被告に付加金の支払を命ずるのは相当でない。 |