全 情 報

ID番号 09313
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 学校法人大乗淑徳学園(大学教授ら・解雇)事件
争点 解雇権の濫用
事案概要 (1) 本件は、被告(学校法人大乗淑徳学園)との間で期間の定めのない労働契約を締結し、被告の設置する大学の教員として勤務していた原告らが、被告が原告らの所属していた学部の廃止を理由としてした解雇が無効であると主張して、被告に対し、労働契約に基づき、それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇後の賃金、期末手当等の支払を求めた事案である。
(2) 判決は、一部却下、一部認容、一部棄却した。
参照法条 労働契約法16条
体系項目 解雇(民事)/3 解雇権の濫用
裁判年月日 令和1年5月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)10969号
裁判結果 一部却下、一部認容、一部棄却
出典 労働判例1202号21頁
裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係 控訴
評釈論文 森戸英幸・ジュリスト1536号4~5頁2019年9月
慶谷典之・労働法令通信2532号26~27頁2019年9月28日
濱口桂一郎(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1543号122~125頁2020年4月
中野博和・LIBRA20巻4号40~41頁2020年4月
石田信平・季刊労働法268号216~217頁2020年3月
佐々木亮・労働法律旬報1964号20~24頁2020年7月25日
鶴崎新一郎(社会法判例研究会)・法政研究〔九州大学〕87巻1号57~72頁2020年7月
判決理由 〔解雇(民事)/3 解雇権の濫用〕
(1)被告が国際コミュニケーション学部の廃止を決定したこと自体を不合理ということはできないものの、被告の財務状況が相当に良好であったことや、同学部の廃止と同時期に人文学部の新設が決定され原告らの担当可能な授業科目が多数新設されたことによれば、国際コミュニケーション学部の廃止に伴う人員削減の必要性が高度であったとはいえないというべきであり、それにもかかわらず、被告は、人文学部への応募の機会を与えず、個別に相談したいなどと述べて、本件各労働契約の存続に期待を持たせる言動に出て、結果的に解雇回避の機会を喪失させたばかりか、原告らを学部に所属させずに他学部の授業科目を担当させるなどの解雇回避努力を尽くすこともなく、原告らに対する説明や原告らとの協議を真摯に行うこともしなかったことなどの前判示に係る諸事情を総合考慮すれば、本件解雇は、解雇権を濫用したものであり、社会的相当性を欠くものとして無効である。
(2)原告らの請求のうち、〈1〉本判決確定の日の翌日以降に支払期日が到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払を求める部分に係る訴えは訴えの利益がないとして棄却し、〈2〉被告に対しそれぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分、〈3〉本判決確定の日までに支払期日が到来する月例賃金及び期末手当並びにこれらに対する各遅延損害金の支払は一定の限度で認容した。