全 情 報

ID番号 09315
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 学校法人Y学園事件
争点 セクシュアル・ハラスメント
事案概要 (1) 本件は、被告学校法人Y2学園に雇用され、被告学校法人が設置、運営するB高等学校(以下「本件学校」という。)の常勤講師として勤務していた原告が、本件学校の当時の分室長であった被告Y1から、セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)を受け、これによって、うつ病などにり患したと主張して、被告Y1に対し、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を、被告学校法人に対しては、使用者責任に基づく損害賠償金、遅延損害金を、連帯して支払うことを求める事案である。
(2) 判決は、原告の訴えを認め、連帯して、594万4227円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じた。
参照法条 民法715条
体系項目 労基法の基本原則 (民事)/均等待遇/(11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 令和1年6月28日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(ワ)1402号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 裁判所ウェブサイト掲載判例
D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則 (民事)/均等待遇/(11) セクシャル・ハラスメント アカデミック・ハラスメント〕
(1)本件各行為(被告Y1が原告に対し、①「がんばってください」などと言いながら、同人を抱きしめて、そのままキスをした行為、②同日、カラオケルームの前で「いい?」と言いながらディープキスをした行為、?学校2階図書室において、同人に仕事の話をしていた原告を抱きしめて、そのままキスをしようとしたため避けようとしたときに「そうやな、あかんな」などと笑いながら、引きはがされる際に、原告の胸を触った行為、④仕事後に2人で食事に行った後、原告が通うサックス教室に車で送った際に、車内で、原告にディープキスをし、原告の胸を揉んだ行為、⑤本件学校の応接室において、仕事のことを話し合っていた原告に対し、原告を抱きしめ、拒否する原告に無理やりキスをした行為、⑥本件学校のダンスルーム内において、部活動の指導及び片付けなどで残業をしていた原告に対し、ディープキスをした行為、⑦車で関係先の挨拶周り後、車をラブホテルに乗り入れ原告の拒絶にもかかわらず、性交渉に及んだ行為)は、いずれも、本件学校の分室長の立場にあった被告Y1と、雇用後1年少々の常勤講師であった原告の、立場の違いなどにより、原告が強く拒絶できない状況で、被告Y1が、この状況に乗じて、原告の意に反して行ったものといえる。これが原告の性的自由を侵害することは、明白であり、本件各行為は、原告に対する不法行為を構成するといえる。
(2)本件各行為と原告の症状との間の事実的因果関係については、原告に既往症があるとしても、本件各行為の前に通院していない期間が約1年半あること、その間に特段の症状などが認められないこと、本件各行為の性質に照らし、認めるのが相当である。
(3)被告Y1は、原告には精神的に不安定なところがあることは認識していたといえるから、原告が、望まない性交渉を含むセクハラにより強く傷つき、本件のような症状に至ることについての、予見可能性はあったと判断するのが相当である。したがって、本件各行為と原告の症状との間には、相当因果関係があると認められる。
(4)仮に、被告学校法人が主張するような措置(①被告学校法人は、管理職に対しセクハラ問題について強い危機感を持つように注意していたこと、②被告学校法人の理事長は、2か月に1回の頻度で、本件学校に赴き、本件学校の職員に対し、口頭でセクハラ防止のために指導、監督をしていたこと)が執られていたとしても、被告学校法人のB校には、セクハラの相談窓口がなかったことが認められ、このような状況下で、本件各行為の当時、性的被害に関してしばしばみられる被害者の対応など、セクハラが発生する背景に対して、どれほどの理解があったのか、実効的な指導がされていたのか、疑問というほかない。被告学校法人が事業の監督について相当の注意をしたなどということはできない。