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ID番号 09316
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 えびす自動車事件
争点 就労拒否に伴う賃金の支払
事案概要 (1) 本件は、被告(えびす自動車株式会社)においてタクシー運転者として勤務していた原告が、交通事故や交通違反を理由として免許停止処分を受けたことなどから、被告から事務職への転換を提案されタクシー運転者としての就労を拒否され、その後、違法に解雇されたと主張して、労働契約に基づき、被告に対し、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、就労が拒否された後の期間の賃金の支払を求めた事案である。
(2)判決は、原告の請求を棄却した。
参照法条 民法536条2項
体系項目 賃金 (民事)/賃金請求権の発生/無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 令和1年7月3日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成30年(ワ)26774号
裁判結果 棄却
出典 労働経済判例速報2405号22頁
D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/賃金請求権の発生/無効な解雇と賃金請求権〕
(1)被告は、就業規則が定める解雇事由に該当するとして、書面到達後30日の経過をもって原告を解雇する旨通知した。原告は、同通知到達後30日経過前に、被告に対し退職届を提出しており、これにより辞職の意思表示をしたといえることから、原告は、被告を退職したと認められる。したがって、本件請求のうち、労働契約上の地位の確認を求める部分及び退職届提出以降本判決確定の日までの賃金の支払を求める部分は理由がない。
(2)使用者の責めに帰すべき事由によって、労働者が労務を提供すべき債務を履行することができなくなったときは、労働者は、現実には労務を提供していないとしても、賃金の支払を請求することができる(民法536条2項)。
 原告の上司であるB所長は、原告に対し、本件免許停止処分の期間が満了した後であっても原告をタクシー運転手として勤務させることは困難である旨伝え、同C課長も同様の認識を原告に対して伝えていたことを踏まえると、被告は、本件免許停止処分以降、原告のタクシー運転手としての就労を拒否し続けており、原告の労務を提供すべき債務は履行不能の状態にあったというべきである。
 度重なる指導にもかかわらず重大な事故を繰り返し発生させ反省する様子を見せない原告を、このままタクシー運転手として勤務させ続けることは危険であるとしてその就労を拒否し、事務職への転換を提案したB所長の判断は、安全性を最も重視すべきタクシー会社として合理的理由に基づく相当なものであったというべきであり、本件免許停止処分の期間が満了した後も、原告が事故防止に向けた具体的取組を被告に説明することはおろか、タクシー運転手として勤務を希望する旨を申し出ることすら一度もなかったことをも踏まえると、被告が本件免許停止処分以降、約1年間にわたって原告の就労を拒否し続け、原告が労務を提供することができなかったことについて、被告の責めに帰すべき事由があると認めることはできない。