全 情 報

ID番号 09323
事件名 時間外手当請求事件
いわゆる事件名 エルピオ事件
争点 管理監督者への該当の有無
事案概要 (1) 本件は、被告(株式会社Y)において総務人事課の課長として勤務していた原告が〈1〉、所定労働時間を超える残業を行ったとして、労働契約に基づく割増賃金請求権に基づき、平成26年10月分から平成28年6月分までの間の割増賃金合計374万5105円及び各月の未払割増賃金に対する遅延損害金の支払を求めるとともに、〈2〉労働基準法(以下「労基法」という。)114条に基づく付加金請求及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
(2) 判決は、原告は労働基準法41条の管理監督者には該当しないとして、本件労働契約に基づく割増賃金請求として373万7991円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じた。なお、付加金の請求は棄却した。
参照法条 労働基準法41条
労働基準法114条
体系項目 労働時間 (民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者
裁判年月日 令和1年9月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)42943号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間 (民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/(2) 管理監督者〕
(1)原告が実質的な決定権限を有していたのは、人事関係業務の一つである採用面接のうち一次面接までで採否を決することができる応募者に関する採否権限という使用者が有する人事権の一部にすぎず、その業務内容に照らしても、労働時間規制の枠を超えた活動を要請されざるを得ない重要な職務や権限を有していたとか、その責任を負っていたとまでは評価できず、また、原告がこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたことを認めるに足りる適切な証拠もない。そうすると、被告における原告の処遇が高水準であると評価できる点を最大限斟酌するとしても、原告が労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない。
(2)被告が割増賃金を支払わなかったのは、原告を管理監督者と認識していたためであるところ、上記の認定判断のとおり、結果としては管理監督者とは認められないものの、原告の被告内における肩書や処遇に照らすと、被告が原告を管理監督者に該当すると認識したことには一応の理由があると解され、被告が原告に割増賃金を支払わなかったことが悪質であるとは評価できない。したがって、本件において、被告に付加金の支払を命ずるのは相当でない。