ID番号 | : | 09330 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 加賀金属事件 |
争点 | : | 取締役就任に伴う雇用契約の終了 |
事案概要 | : | (1) 原告は、平成2年9月に従業員として被告(加賀金属㈱)に入社し、その後、平成20年9月に取締役に、平成27年6月に常務取締役に就任したが、平成29年3月29日、原告(本件原告訴訟代理人)に対し、被告の取締役から原告を解任するとともに、従業員としての地位は平成20年9月の取締役就任時点で実質的に終了しており、同解任をもって原告との契約関係が全て終了している旨記載した書面がファクシミリで送信された。そのため、原告は、被告に対し、主位的に、雇用契約が継続していること(取締役就任あるいはその後の事情によって雇用契約が終了していないこと)を前提に、(1)雇用契約に基づく、原告が雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を請求するとともに、賃金・時間外労働に対する割増賃金及び付加金等を請求(主位的請求〈1〉)し、予備的に、退職金の支払(予備的請求〈1〉)や正当な理由がない取締役解任に関しての損害賠償を請求(予備的請求〈2〉)した事案である。 (2) 判決は、平成27年6月に常務取締役に就任した時点を雇用契約の終了と認定し、主位的請求のうち退職金約1,096万の支払のみを認め、その余の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 会社法329条 会社法339条 労働契約法1条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)/労働者/(4)取締役・監査役 退職/2合意解約 |
裁判年月日 | : | 令和2年1月24日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成29年(ワ)第5300号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労働判例1226号84頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職/2合意解約〕 (1)被告は、平成20年9月の取締役就任、さらには、その後の平成22年8月、原告に対して使用人職務を委嘱する旨の取締役会決議をしており、引き続き製造部長との役職名を付与していることが認められる。この点は、引き続き使用人としての役職名を付与したという外形のみにとどまらず、取締役会決議という被告内部での意思決定の下、原告に使用人としての地位を兼ねさせていたとの評価が妥当し得る事情である。被告は、取締役就任によって原告が労働者性を喪失したとして、その後の待遇面や担当職務等について様々な指摘を行うものではあるが、前記取締役会決議の存在及びそのような事情が持ち得る意味合いに照らせば、被告が主張する諸事情を総合したとしても、原告と被告の間に本件雇用契約を終了させる旨の黙示的な合意があったとは認めるに足りないというべきである。 (2)原告は、平成27年6月1日、被告から常務取締役の役職名を付与されているが、その役職名自体、明らかに従業員とは一線を画するものであるとともに、引き続き営業部長の役職名が付与されていたであろうC取締役とは異なり、製造部長等といった使用人の地位を示す役職名が付与されないようになっている。そして、原告が関与した具体的な職務内容の中には、原告は、常務取締役就任後である平成28年8月、労使協定に関する書面について、常務取締役との肩書を付した上で、使用者側の唯一の署名者として署名押印していることなど、従業員としての地位の保有とは明らかに矛盾抵触するというべきものが見受けられるようになっている。さらに、原告の報酬額を中心とした待遇面に着目すれば、取締役就任時において、A社長及びB専務との報酬額の差は顕著であったというべきであるが、平成24年度期以降その差は縮小していき、常務取締役就任前後である平成26年度期及び平成27年度期(A社長年額960万円、B専務年額1,060万円、原告年額950万円)には、その差は更に縮小したものとなっている。以上の諸事情を総合考慮すれば、原告と被告の間に、原告が平成27年6月に常務取締役に就任した際、本件雇用契約を終了させる旨の黙示的な合意が成立したものと認定することが相当である。 |