全 情 報

ID番号 09332
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 岡部保全事件
争点 賃金の減額合意の有効性
事案概要 (1) 本件は、被告(Y1合名会社)代表者の娘婿であり、被告で働いていた原告が、平成29年10月支払分から原告の同意なく賃金を減額され、平成29年12月22日をもって辞職した扱いとされ、平成30年1月以降、賃金を支払われなくなったとして、雇用契約に基づき、地位確認及び平成29年10月分から同年12月分までは減額された月額201万5566円の賃金及び平成30年1月以降月額309万円の賃金等の支払を求める事案である。
(2) 判決は、原告の賃金減額の同意を認めず、原告が、被告に対し、明示にも黙示にも辞職の意思表示をしていないとし、原告が労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに減額された平成29年10月分から同年12月分まで月額201万5566円の賃金及び平成30年1月分から本判決確定の日までの月額309万円の賃金等の請求を認容した。
参照法条 労働契約法8条
労働基準法24条
体系項目 賃金 (民事)/3 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 令和2年1月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成30年(ワ)第24409号
裁判結果 一部却下、一部認容
出典 D1-Law.com判例体系
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金 (民事)/3 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕
(1)賃金の減額に対する労働者の同意は、形式的に存在するのみでは足りず、自由な意思に基づいてされたものであることを要するというべきである。本件は、被告代表者と原告との間に親族関係がある点で、通常の労働者、使用者との関係と全く同様とはいえないが、賃金の減額に対する同意の有無を慎重に判断する必要がある点は異ならないと解すべきである。
(2)原告は、本件減額の告知を受けた翌日の平成29年10月13日、賃金額を説明するCのメールに対し、「了解です」との返信をしたものの、その後、同月25日及び26日には、本件減額を認めていない旨のメールをC宛に送信し、同月30日には、被告代表者の執務室へ赴いて本件減額について考え直してほしい旨を直接告げ、同年12月には、原告代理人に依頼して、賃金の差額を請求する旨を通知した。「了解です」との言葉の意味は、内容を承諾した旨とも内容を理解した旨とも解釈可能であり、原告が、「了解です」とのメールを送信したのは、被告代表者に話をするには時間を置いた方がよいと考えたためであると説明していることに加え、同メール送信後ほどなく、減額告知後の最初の給与支給日までには、被告による本件減額に対して明示的な拒否の意思を伝えていることからすると、原告が、被告に対して、本件減額に同意する意思を表明したということはできない。