ID番号 | : | 09333 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 社会福祉法人青い鳥事件 |
争点 | : | 有期雇用労働者の不合理な待遇の解消 |
事案概要 | : | (1) 本件は、有期労働契約を被告(社会福祉法人青い鳥)と締結し相談員として働いている原告が、無期労働契約を被告と締結している職員との間で、産前休暇の期間及び産前産後の休暇期間における給与の支給の有無に相違があることは、労働契約法20条に違反すると主張して、〈1〉労働契約に基づき、産前休暇及び産前産後の休暇期間における給与の支給について、無期労働契約の職員と同様の就業規則の規定の適用を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、〈2〉不法行為に基づく損害賠償として、第一子の出産の際に、無期労働契約の職員と同様の扱いを受けていれば払われるべきであった全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」という。)から出産手当金との差額に相当する14万1560円、〈3〉第二子の出産に関して、不法行為に基づく損害賠償として、産前8週間前から同6週間前までの期間に原告が取得した年次有給休暇相当額である9万2400円及び主位的には労働契約に基づく賃金請求として、予備的に不法行為に基づく損害賠償として、無期労働契約の社員と協会けんぽから出産手当金として支給された金員との差額に相当する19万1520円、〈4〉不法行為に基づく損害賠償として、原告が無期雇用契約社員と有期雇用契約社員を区別する違法な取扱いによって被った精神的苦痛に対する慰謝料100万円等の支払を求める事案である。 (2) 判決は、本件労働条件の相違は労働契約法20条に違反するものではないとして、原告の請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法20条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則 (民事)/7 男女同一賃金、同一労働同一賃金 |
裁判年月日 | : | 令和2年2月13日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成30年(ワ)第2167号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1222号38頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則 (民事)/7 男女同一賃金、同一労働同一賃金〕 (1)本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違は、有期契約職員の出産休暇に関する労働条件について、有期就業規則の規定が適用されることにより生じているものであり、これは、労働契約に係る期間の定めの有無に関連して生じたものといえるから、労働契約法20条にいう期間の定めがあることによる労働条件の相違に当たる。 (2)有期契約職員は、管理職への登用や組織運営面への関与が予定されておらず、業務内容及びその変更の範囲について、無期契約職員とは職務上の違いがあるということができる。 (3)被告において、将来グレード6以上の職位に就き、運営面において中核になる可能性のある女性のソーシャルワーカー正社員が、出産を機に仕事を辞めることを防止し、その人材を確保することは、組織運営上の課題であったと認められる。 (4)無期契約職員の職務内容に加え、被告における女性職員の比率の多さや、本件出産休暇及び本件出産手当金の内容に照らすと、これらの制度が設けられた目的には、被告の組織運営の担い手となる職員の離職を防止し、人材を確保するとの趣旨が含まれるものと認められる。 そうすると、本件出産休暇及び本件出産手当金の制度は、有期契約職員を、無期契約職員に比して不利益に取り扱うことを意図するものということはできず、その趣旨が合理性を欠くとは認められない。これに加え、無期契約職員と有期契約職員との実質的な相違が、基本的には、2週間の産前休暇期間及び通常の給与額と健康保険法に基づく出産手当金との差額部分に留まることを併せ考えると、本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違は、無期契約職員及び有期契約職員の処遇として均衡を欠くとまではいえない。 |