全 情 報

ID番号 09334
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 地方独立行政法人山口県立病院機構事件
争点 就業規則の改正と労働契約更新についての合理的期待
事案概要 (1) 本件は、被告(地方独立行政法人山口県立病院機構)との間で、平成17年9月1日から平成30年3月31日まで有期労働契約を繰り返し締結して、被告の運営する病院で看護師として勤務していた原告が、被告に対し、平成30年4月1日以降、同契約が更新されなかったこと(以下「本件雇止め」という。)は労働契約法19条に違反するとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める事案である。
(2) 判決は、原告の請求を認め、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認した。
参照法条 労働契約法19条
体系項目 解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
裁判年月日 令和2年2月19日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 平成30年(ワ)第30号
裁判結果 認容
出典 労働判例1225号91頁
審級関係 控訴(後、和解)
評釈論文
判決理由 〔解雇 (民事)/14 短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
(1)原告は、平成23年4月以降、反復継続して本件労働契約を更新されてきたものであり、その手続は、形式的に更新の意思の確認が行われるのみであって、勤務態度等を考慮した実質的なものではなかったということができる。また、原告が従事していた看護業務は、臨時的・季節的なものではなく、恒常的業務である上、本件病院における有期職員と契約期間の定めのない職員との間で、勤務実態や労働条件に有意な差があるものとは認められない。したがって、原告が本件労働契約の契約期間満了時に本件労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるといえ、当該合理的な期待は、平成29年4月1日以前から生じていたものというべきである。
(2)平成29年4月に本件就業規則が改正され、有期常勤職員の通算雇用期間の上限が5年とされるとともに、平成29年4月契約書には、更新について、本件就業規則の更新上限条項の範囲内で更新される場合があることが明記されている。
 しかし、本件就業規則の改正の有効性については措くとしても、前記のとおり、平成29年4月1日以前の段階で、原告には既に本件労働契約更新について合理的期待が生じており、本件就業規則の改正によって更新上限条項が設けられたことをもって、その合理的期待が消滅したと解することはできず、また、本件就業規則の改正について被告から原告に対して具体的な説明がされたのは、平成29年4月契約書が取り交わされた後である同月12日又は同月13日であることが認められ、原告が通算雇用期間の上限設定について認識していたとはいえないので、原告の本件労働契約更新に対する合理的期待が消滅したといえない。
以上を総合すると、本件労働契約は、少なくとも労働契約法19条2号に該当する。
(3)被告は、本件雇用継続審査の結果に基づき、本件雇止めを決定したと認められるところ、本件面接試験には、合理的な評価基準の定め及び評価の公正さを担保できる仕組みが存在せず、本件雇用継続審査における判断過程は合理性に欠けるものといわなければならない。
(4)本件雇止めは、労働契約法19条に反し、原告と被告は従前と同一の条件で雇用契約を更新したものとみなすことができ、本件雇止め後に特段の事情の変更もないから、原告は、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあるというべきである。